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変革期にある人事・退職金制度、「現状診断」で最適な制度設計を=IICパートナーズ

2019/08/30 12:30

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IICパートナーズ 常務取締役
向井洋平氏
 日本で進む「働き方改革」等によって、企業の人事・退職金制度の見直しも進んでいる。退職金・企業年金に特化したコンサルティングファームであるIICパートナーズの常務取締役 向井洋平氏(写真)は、「退職金制度を見直す折には、そもそも退職金をなぜ用意するのかという目的を改めて明確にし、現状を客観的に把握した上で制度設計を行うことを提案している」という。変革期にある企業年金制度にあって、確定拠出年金(DC)の位置づけ等、企業年金制度の現状を聞いた。

 ――IICパートナーズの強みは?

 当社の創業は1996年7月なのですが、2000年にあった会計ビッグバンによって、退職金や企業年金のある企業・団体が負債として退職給付引当金の計上が必要となった時に、この退職給付債務の計算を行う専門会社として成長しました。アクチュアリー・年金数理人を多数抱えるユニークな年金コンサルタント会社です。

 アクチュアリーというと、生命保険会社や信託銀行といった金融機関に所属しているケースが多く、年金業務以外の部分でも取引があって企業との関係性の中では、利益が相反する場合もあります。また、監査法人に所属しているアクチュアリーは、自分で年金債務を計算して監査も行うと自己監査という矛盾があります。そこで、当社のような中立の立場で退職給付債務を計算する専門家が求められました。現在、600社を超える企業様とお取引いただいています。

 ――近年の相談案件で特徴的なことは?

 近年は、「人生100年時代」や働き方改革などに対応した新しい退職金制度に見直したいという制度設計のご相談が目立って増えています。

 60歳だった定年を引き上げる、あるいは、65歳以降も勤めてもらうなど、これまでの制度を見直すにあたって、人件費や福利厚生の制度を見直すということは、ほとんどの企業が直面している問題です。日本経済の成長率は低く、今後も大きく伸びるとは期待しにくいので、企業が存続していくことを考えると、人件費の負担は大きく増やせないと考えるのが一般的ですが、あまり抑えた内容にすると、人材を引き留めておくことが難しくなります。

 人事・退職金制度を見直すにあたっては、安心して働ける処遇を確保しつつ、過度な人件費負担を抱えないというバランスが重要になります。一方、新興企業や中小企業の中では、優秀な人材を確保するという狙いから、これまでなかった企業年金制度を導入するという動きもあります。

 そもそも当社は、企業の退職給付債務の計算に始まって、これまではどちらかといえば企業の債務やリスクを減らしたいというニーズ応える形でコンサルティング業務を行ってきたわけですが、最近では退職金や企業年金本来の目的に立ち返った制度設計の依頼が増えています。

 ――企業年金におけるDCの位置づけは?

 DCは60歳まで引き出せないので、老後の生活資金、年金そのものという位置づけです。企業の財務的な側面では、掛金を拠出してしまえば追加負担のリスクがなく、退職給付債務を把握するなどの面倒な手続きがない、極めてシンプルな企業年金というメリットもあります。年々、導入企業が増えている成長途上の企業年金制度といえます。

 ただ、退職金の役割は、老後の資金だけではありません。転職等のおりに、当面の生活資金や資格取得等の資金が必要になる人もいます。その際、DC制度では退職一時金を手渡すことができません。

 「人生100年時代」といわれる中で、今後は従業員の生涯にわたるキャリアに寄り添うという考え方が重要になります。企業は、働き方が多様化する中、多様な働き方に柔軟に対応できる制度を作りたいと考えています。ですから、DCだけというより、DC+確定給付企業年金(DB)、DC+中退共(中小企業退職金共済)、あるいは、DC+退職一時金制度など、何かと組み合わせて使うことが多くなっています。

 ――DC制度向けのサービス内容は?

 制度設計から制度運営のサポートまで、一貫したサービスが提供できます。運営管理機関業務や運用商品の提供などを行っていないので、中立的な立場で、事業主、また、従業員の方々のための制度設計ができます。

 そもそも年金制度設計において、DCありきの考え方をしません。企業の現状や将来像を聞かせていただいた上で、その企業と従業員にとって最も良い人事・退職金制度はどうあるべきかという視点でプラニングします。DCを入れることが決まった場合には、複数の運営管理機関からプラン候補を挙げていただき、コンサルタントとしてより良いプランを選ぶお手伝いもします。

 DC運営サポートの点では、加入者に対する投資教育や金融リテラシーの向上という点で、DC運用サポートツール「みらいナビ」を提供している未来貯金、また、ファイナンシャルプランの専門会社である家計の総合相談センターらと業務提携して専門的なサービスを提供しています。

 従業員の金融リテラシーの向上というニーズは、DCを導入していない企業にもあります。人生100年時代、年金が2000万円不足するという話もありましたが、従業員の長引く退職後の生活も考え、しっかりしたマネープランをもった働き方をしてほしいという思いからです。会社の福利厚生制度を見直す中で、従業員に対する金融リテラシーの向上をサポートするサービスを導入するという話が出るようになったのは、近年に顕著な傾向です。

 ――今後の展望は?

 昨年12月に、企業年金制度の制度設計に役立つコンテンツを提供する観点で「クミタテル」という情報提供サイトを立ち上げました。退職金・企業年金制度に関する話題や、実際の企業様の事例紹介などをしています。多くの企業が、人事・退職金制度の再構築が必要と感じている中で、制度設計のヒントになるような情報を提供してきたいと思っています。

 また、新たなサービスとして「現状診断サービス」をスタートしました。定年延長が課題となるなか、定年延長した場合の退職金や企業年金をどうしたらよいのか、また、シニア社員の処遇を改善したいが人件費の増加が心配だなどという悩みが出てきます。「現状診断サービス」は、今後5年後、10年後の人員構成と人件費が把握できるサービスです。従業員の年金・退職金を含めた60歳以降の収入が把握できますから、人事・退職金制度の改善ポイントが明らかになります。

 この「現状診断サービス」を実施すると、非常に充実した退職金制度を運営されている企業が少なくないことがわかります。これまでは、自社の人事・退職金制度を1人1人の従業員の収入ベースに具体化して把握することが出来なかったため、何となく業界並みの水準などと思っていたものが、業界でも抜きん出て手厚い制度だということが分かったという企業もあります。そのような企業では、人材採用の折にも、胸を張って自社の人事・退職金制度をアピールすることができるようになります。

 私たちは、もっと企業が人事・退職金制度について堂々と語るべきだと考えています。働く者にとっても、今年の年収も大事な情報ですが、その会社で働き続けることによって得られる年収の見通しやそれに伴う年金(企業年金と公的年金)や退職金がどのように変化するのか知りたいと思っているはずです。「現状診断サービス」は、従業員の年金等を含めた収入を年齢別、役職別で把握できますので、この分析結果を使って従業員に具体的な収入の変化を踏まえたキャリアアドバイスができるようにもなります。

 人事・退職金制度は、個々の企業・団体ごとに、それぞれの事情に応じた制度設計が重要だと思います。その制度設計の専門家として、多様な働き方、そして、長寿化が進む日本社会に相応しい制度を提案していきたいと思っています。

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