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フィデリティが退職準備を「見える化」、年齢や年収に応じて「自分ごと」の退職準備が確認できる

2018/11/19 13:41

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フィデリティ退職・投資教育研究所
所長 野尻哲史氏
 フィデリティ投信とフィデリティ退職・投資教育研究所は11月14日、退職準備の資産形成ロードマップを見える化した「退職準備の指標」を発表した。人生の早い段階から退職準備を始めた方が、負担感は少なく十分な準備もできるが、若い頃は自分の退職を「自分ごと」として捉えることが難しく、多くの若者が資産形成を始めていないのが現状だ。フィデリティ退職・投資教育研究所の所長である野尻哲史氏(写真)は、「その時々の年収をベースにした、退職に向けた資産額を算出した。ゴールまでの進捗状況を見える化し、退職準備の必要性を身近に感じていただくために開発した。ゴールが見えることで、20代、30代ではなくても、『今からでも間に合う』と思うきっかけになるのでは」と語った。

 「退職準備の指標」は米国のフィデリティで5年前にスタートし、その後、カナダが導入。この11月に同じ考え方に基づく指数として、日本をはじめ、英国、ドイツ、香港でも発表し、6つの国と地域で比較できるようになった。

◆20代の50%以上が退職後の準備「ゼロ」

 フィデリティ退職・投資教育研究所は、「サラリーマン1万人アンケート」を継続的に実施し、日本の現役世代の投資行動や考え方の変化を追っている。その2018年調査によると、「退職後の生活のための準備資産」が「ゼロ」との回答が、20代男性で52.6%(女性は56.6%)となり、年代が上がるにつれて減少するものの、50代男性でも31.2%(女性は27.1%)になっている。

 現在20歳代の若者が退職期を迎える2065年には65歳以上の人口比率が40%近くに達し、これまでの世代以上に自助努力が求められることになる。自助努力による退職準備が「ゼロ」のままでは、老後に大変厳しい生活を送らざるを得なくなることが考えられる。「できるのであれば、少しずつでも老後のための資金準備を若いうちからはじめていただきたい。そこで、退職までにいくら資産形成すれば良いのか? また、資産形成を始めた後で、自分の積立額は将来の備えとして十分なのか? このようなゴールや目安が見える化できれば、資産形成のきっかけになり、かつ、途中で止めずに続けられるのではないか」(野尻氏)として作られたのがフィデリティの「退職準備の指標」だ。

◆退職準備の道しるべ「40歳までに年収の2倍」をつくる

 まず、退職準備の道しるべとして提示しているのが、年齢別の退職準備資金「年収倍率」。「退職後も現役時代と同じ生活水準を維持するためには、『30歳で年収の1倍を退職準備として確保する』という指標だ。「40歳は2倍」「50歳で4倍」「60歳で6倍」となり、ゴールは「退職を想定する67歳で7倍」になる。この7倍とは別に退職一時金として年収の2倍程度の受取を想定している。すなわち、退職一時金がない人は、67歳時点では年収の9倍の資金を準備するという想定だ。

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出所:フィデリティ投信


 このゴール設定について野尻氏は、「ゆとりある生活に必要な資金として月額36万円などといった定額のアプローチでは、多くに人たちが『自分ごと』として考えられない。自分の年収をベースに、自分自身の生活水準を維持するという個々人のゴール設定することが重要だ」という。さらに、「自助努力で用意する退職後の資産を求めるために、公的年金として受け取る金額を控除して、個人の資産でどこまで準備すべきなのかということを全国消費実態調査(2014年)に基づいて現実的に試算した」という。

 公的年金は年収が低いほど(生活水準を切り詰めて生活している人ほど)、退職後の生活資金として所得を代替する割合が高くなる傾向にある(現役時代の所得の違いほどには公的年金の金額に差はないという公的年金の所得再配分機能が働く)。一方、個人の金融資産を老後の生活資金として活用する「個人資産代替率」は30%台半ばで年収による違いが少なかった。そこで、この「個人資産代替率」をベースにして、自助努力で用意する退職後の資産を計算したのが、フィデリティの「退職準備の指標」だ。この考え方は、米国や英国など、他の国々とも同じように通用する。日本では、将来の年金受給額は実質的に20%減少すると想定すると、個人資産代替率は36%になった。

 さらに、退職時点で用意した資金を、資産を枯渇しないようにして引き出していける金額も計算している。その引き出し額はインフレ率を加味して計算している。この引き出し率の計算は、67歳で退職し、93歳で死亡する(退職後の期間を27年)として、90%の確率で枯渇しない引き出し額を求めると、日本では退職時点の退職生活用資産の「3.9%」という引き出し率が計算できた。

 この「退職準備の指標」の算出は、過去の市場データを用いたシミュレーション結果に基づいている。1990年から2017年までの年間データを、一般的なターゲット・デート・ファンドの株式分配比率に沿った形で年齢別に変化させ、毎月末にリバランスしながら様々な環境下で起こりうるリターンやボラティリティを検証している。公的年金の受取額の計算では、制度上の受給年齢は65歳とし、繰下げて67歳から受給することとし、この繰下げによる上積み額は現在の制度のままと想定して反映させている。

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出所:フィデリティ投信


◆退職準備は、スタート時期とともに「退職年齢」でも違い

 なお、フィデリティの「退職準備の指標」で国際比較をすると、年収の何%を退職後の資産形成に費やすべきかという「資産形成比率」は、日本の「16%」に対し、米国は15%、英国は13%、ドイツは21%、香港は20%、カナダは18%だった。退職時までに形成すべき資産の「年収倍率」は、日本の「7倍」に対し、米国10倍、英国7倍、ドイツ10倍、香港12倍、カナダ11倍。「資産形成比率」も「年収倍率」も国によって極端な違いはない。

 一方、「持続可能な引出率」は、日本の「3.9%」に対し、米国4.5%、英国5.0%、ドイツ4.6%、香港4.1%、カナダ4.5%だった。国内株価の低迷が続いていたため、日本の引出率が最も低くなった。

 フィデリティ投信では、この「退職準備の指標」について、現在の年齢や年収を入力することで、個々人に応じて「年収倍率」や「資産形成比率」が簡単に計算できるツールを公式サイトで公開している。野尻氏は、「是非、多くの方にシミュレーションのツールを試していただき、ご自身の資産形成比率や目標とする年収倍率などについて計算をしていただきたい。そうすると、現在の準備状況や退職年齢によって退職準備額や持続可能な引出率が変化することが分かる。退職年齢は自分でコントロールできる。いつまで働くのか、どんな働き方をするのかなどについて、将来を考えるきっかけにしてほしい」と語っていた。

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出所:フィデリティ投信


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