iDeCoニュース

企業年金運用、「伝統4資産」から「株式・債券・オルタナティブ」で資産管理

2018/07/03 17:15

jpmorgan.jpg
JPモルガン・アセット・マネジメント
グローバル運用商品部
クライアント・ポートフォリオ・マネジャー
國京 彬氏
 JPモルガン・アセット・マネジメントが継続的に調査している企業年金の運用動向調査がまとまった。今回の調査は、2018年3月上旬~6月中旬にかけて聞き取り調査し、確定給付企業年金(DB年金)120、共済3の合計123の年金基金の運用についての考え方を集計した。その結果、世界的な低金利、国内のマイナス金利政策の影響によって、年金の運用難が一層深刻化し、安定的なインカムゲインを求めてインフラや不動産などオルタナティブ資産への投資を積極化させている年金基金の運用姿勢が浮かび上がってきた。

第5の資産といわれたオルタナティブが運用の主役の一つに

 JPモルガン・アセット・マネジメントの調査は、今回で11回目を迎えるが、近年の傾向として資産配分の比率は、「国内債券減少、株式減少、オルタナティブ増加」がトレンドだった。今回は「オルタナティブ」が過去最高となる17.1%(政策アセットミックスベース)にまで増加。調査結果を分析しているグローバル運用商品部 クライアント・ポートフォリオ・マネジャーの國京彬氏(写真)は「オルタナティブについては、伝統4資産に次ぐ、第5の資産という位置づけでポートフォリオに組み入れていたものの、2018年3月末時点の配分実績では国内債券に次いで2番目に多い資産配分比率になっている。もはや、オルタナティブは年金資産運用の主役のひとつといえる」と語った。

 また、今回の調査で明らかになった傾向として、政策アセットミックスで「グローバル債券・株式」枠を設定するDB年金が2割を超えて拡大している。従来は、伝統4資産が基準となり、国内株式・債券、外国株式・債券の4資産の比率で調整していたが、国内債券への投資比率を引き下げる中で、国内債券に代わって「ヘッジ付き外国債券」を採用する年金が増加。国内債券の枠組みを残していると柔軟な資産配分が難しいと判断した年金基金から伝統4資産を「グローバル債券」と「グローバル株式」の2つにくくり直す動きが続いている。「2017年度は、そうした動きが加速した」(國京氏)という。

 このグローバル債券・株式枠を設定している年金基金は、政策アセットミックスにおいて「オルタナティブ」に配分する割合が高いという傾向も明確に出た。グローバル枠のある年金では、オルタナティブへの配分比率は21.4%だったが、グローバル枠がない年金では16.0%にとどまった。

 一方、資産配分比率が高まっている「オルタナティブ」については多様化が進んでいる。「絶対収益型」への配分比率が高いものの、近年では、「マルチ・アセット」「保険関連」「実物不動産」などへの配分が増えている。また、新たに「プライベート・デット(未公開債券)」の検討・組み入れが進んでいるという。ただ、オルタナティブの採用は、年金基金の抱える課題によって様々で、「国内債券の代替と考えている年金では、インフラなど流動性を犠牲にしてもインカムの確保を重視している。株式の代替にオルタナティブを採用する場合は、ヘッジファンドやマルチ・アセット戦略が選好されているようだ。プライベート・デットの検討は、投資期間が短いことが支持されている模様」(國京氏)という。

企業年金の予定利率2.32%、自ら運用する確定拠出年金はどうする?

 今後の運用の課題は、実体経済の低成長によって期待リターンが過去に比べて低水準となる中、どこに資金を振り向けていくべきかという点に運用担当者は頭を悩ましている。DB年金の予定利率は、運用難を背景に年々低下してきており、2018年度は2.32%になった。予定利率1%台のDB年金も全体の13%を占めている。ただ、依然として「予定利率引き下げを検討中」と回答した基金は全体の7%にとどまり、予定利率引き下げについては底打ちが近づいている様子だ。株高などによって運用実績が比較的好調な中で予定利率を引き下げるという決断には賛同が得にくいという事情もあるという。

 ただ、JPモルガンの今後10~15年の実態経済の成長率予想は、先進国の実質GDPが1.5%成長でインフレ率1.75%、新興国でもGDP4.5%成長でインフレ率3.5%という見通し。「今後も長期にわたって運用難が続く見通し」(國京氏)としている。「年金の傾向としては、日本国債への投資比率を30~40%の水準から20%程度に落とす中、ヘッジ米国債やヘッジ欧州国債へと資産をシフトしてきたものの、ヘッジコストが上昇したために、流動性を犠牲にして私募REITや保険、プライベート・デット、インフラなどオルタナティブを取り入れ始めている。ただ、オルタナティブはシンプルではなく、この投資内容を関係者に説明することに頭を悩ましている」という。

 DB年金の資産配分比率の考え方などは、確定拠出年金(企業型・個人型)を運用する上で参考になる。DB年金の期待リターンは2.64%、想定リスクは5.12%という水準だ。運用のプロといわれる年金の運用担当が、現在の市場環境を低い水準のリスク・リターンで運用しようという考えに立っている。「企業年金が2%台前半という低い予定利率で運用している時代に、7%~8%という期待リターンで考えるのは、欲張り過ぎかもしれない」という自省の材料になる。また、企業年金の資産配分比率の考え方は、確定拠出年金の資産配分を考える上で参考にできる。iDeCoの運用を考える時にも、「企業年金の予定利率が2.3%台」というのは、運用方針を考える基準の一つになるのではないだろうか。

20180703_AM.jpg

【関連記事】
iDeCoの指定運用方法が示唆する新時代、リスク取る資産運用で高齢社会を豊かに
ゲタを履いて荒波を乗り越えよう! iDeCoの指定運用方法に投信が選ばれるわけ
iDeCoでも発表が相次ぐ「指定運用方法」、iDeCoの制度理解を深める一助に

    
    

バックナンバー

  1. iDeCoの9月新規加入者は約3.15万人、10月に厚労省の職場iDeCoや「auのiDeCo」が開始 ( 2018/11/01 16:00)
  2. auのiDeCoはスマホアプリで資産形成をサポート、運管手数料無料でポイントも貯まる ( 2018/10/24 18:07)
  3. 企業型DC継続投資教育の好事例、DCエクセレントカンパニーに曙ブレーキ、サントリー、ニチレイを表彰 ( 2018/10/12 17:19)
  4. DC専用ファンド(2018年9月)、純資金流入額は約162億円と1年ぶりの低水準 ( 2018/10/11 14:25)
  5. 確定拠出年金を軸に資産形成のコアとして定着図る、フィデリティがターゲット・デート・ファンドを拡充 ( 2018/10/04 09:30)
  6. iDeCoの8月新規加入者は約3.53万人、加入者総数が100万人を突破 ( 2018/10/03 09:15)