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人生100年時代を見据えた公的年金の新しい枠組み作り、社会保障審議会年金部会が再開

2018/04/05 17:47

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社会保障審議会 年金部会(第1回)の様子
 社会保障審議会年金部会(部会長:神野直彦・日本社会事業大学学長・東京大学名誉教授)の第1回会合が4月4日、東京・永田町で開催された。前回2016年7月に開催されて以来、1年9カ月ぶりの再開。2019年に年金財政検証を控え、次期年金改正に向けた様々な課題を審議していく。厚生労働省年金局長の木下賢志氏は、「人生100年時代への備えとして年金制度はどうあるべきか、様々な角度から議論をお願いしたい」と要請した。

年金制度改革の歴史、収入面で固定され年金支払額で調整する時代に

 年金制度改革は、1985年(昭和60年)に基礎年金(国民年金)の導入と給付水準の適正化を行う大改革を実施。それに匹敵する大きな改革を2004年(平成16年)に実施して「上限を固定した上での保険料率の段階的引き上げ」「マクロ経済スライドの導入」「基礎年金の国庫負担割合の引き上げ」などを実施した。保険料率の引き上げは、厚生年金が2004年10月から毎年0.354%引き上げられ昨年18.3%(労使折半)の上限に到達。基礎年金国庫負担の2分の1への引き上げも実施したことから、「収入面では財政フレームは完成をみた」といえる状態になった。今後は、収入が固定化される中で、支払う年金額を財源の範囲内で給付費が賄えるよう、年金額の価値を調整することによって制度を維持することになる。

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出所:社会保障審議会年金部会


 年金部会で議論の対象となる主な論点として提示されたのは、以下の通り。

(1)マクロ経済スライドの調整機能は適切か?

 再開された年金部会で議論するテーマの一つが、年金支払額の適正化について。現在、年金額を自動調整する仕組みを「マクロ経済スライド」と呼んでいるが、この調整方法が長期的に持続可能であるかを検証する必要がある。マクロ経済スライドによる調整は、「基礎年金で2043年度(平成55年度)」「厚生年金で2020年度(平成32年度)」で終了することになっているが、5年に1度の財政検証でマクロ経済スライドが機能する前提条件を整備してきている。

 現在も昨年7月に組織された「年金財政における経済前提に関する専門委員会」において、前提条件等の議論を行っているところだが、年金部会では専門委員会の報告を得て、マクロ経済スライドのあり方について議論していく。

 また、現在、マクロ経済スライドについてもルール改訂による微調整が進んでいる。今年4月からは、「年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で前年度までの未調整分を含めて調整」という新ルール、いわゆる、「キャリーオーバー」が発動され、本来ならばマクロ経済スライドによって0.3%減額されるはずのところを据え置いている。さらに、2021年4月からは、「賃金変動が物価変動を下回る場合には賃金変動に合わせて改定する考え方を徹底」というルールが適用される。2021年からのルールに則れば、今年度のケースでは年金額が0.4%減額されることになる。

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出所:社会保障審議会年金部会


 このようなルールの改定は、「制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため」という大命題に沿って盛り込まれているが、少子化、平均寿命の伸びなど長期的な構造変化を背景に、現在の高齢世代に配慮しつつ、かつ、支え手である現役世代の負担能力に応じた給付というバランスの中で見直されているため、わかりにくく、効果の検証も難しいものになっている。

 日本の年金財政検証は、「欧米と比較して、細かな前提条件をおいて非常に精緻に行っている。しかし、実際には将来の社会構造の変化や物価、賃金の動向などは正確に予測することができないのだから、欧米のような大雑把な前提条件のもとで検証するだけでも十分なのではないか」という意見もある。

(2)多様化する働き方に被用者保険(年金・医療)の適用拡大

また、「平成28年年金改革法」によって、短時間労働者への厚生年金保険の適用拡大が行われた。2016年(平成28年)10月からは従業員501人以上の企業で、「週労働時間20時間以上」「月収8.8万円以上」の短時間労働者に厚生年金が強制適用され、約37万人が新たに厚生年金の対象者に加わった。当初の見込みでは25万人程度と予測されていたが、それを上回る人の年金が拡充した。また、2017年4月からは500人以下の企業について労使合意に基づく任意で厚生年金が適用できるようになった。こちらは、新たな適用者は3,000人足らずにとどまった。

 この被用者保険の適用拡大は、2019年9月までに「更なる適用拡大について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を実施」と法律に書かれていることから、今後の年金部会において具体的な措置の内容をつめていくことになる。

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出所:社会保障審議会年金部会


 委員の間からは、適用拡大によって予想を上回る適用者が出たこと、また、適用拡大によって保険料負担が生じるため労働時間がより短時間化するとの懸念があったものの実際には労働時間を延長する傾向があることなどを高く評価する声があった。また、「強制と任意の違いは大きい。任意の対象企業は、検討すらされていないのが現状ではないだろうか」「月収8.8万円以上などの条件は適切なのか。強制範囲を広げることも必要」「広報活動を強化することも必要」など、より強力な取り組みが必要という意見があった。

(3)高齢期における就労状況の変化に応じた年金受給のあり方

 政府の「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年6月閣議決定)、また、「高齢社会対策大綱」(2018年2月閣議決定)などによって、年齢にかかわりなく希望に応じて働き続けることができるよう雇用・就業環境の整備を図るとともに、社会保障制度についても柔軟な制度となるように必要に応じて見直しを図るとされている。

 現在の制度では、年金の受給開始時期は「60歳から70歳までの間で個人が自由に選べる」仕組みになっている。65歳より早く受給を開始した場合には年金金額は減額(最大30%減額)、65歳以降に受給を開始した場合には増額(最大42%)される。ただ、実際には受給権が発生するとほとんどの人が年金の受給を開始している。年金の受給を高齢時に繰り下げる人の割合は受給権者の1%程度しかいないのが実態だ。

 現在、在職老齢年金制度があり、就労して一定以上の賃金を得ている厚生年金受給対象者に対して被保険者として保険料負担を求めるとともに、年金支給を停止し、保険料負担分は年金給付の増額に反映させる仕組みがある。この仕組みが適正であるかの評価も必要になる。そして、老齢厚生年金の支給開始年齢が定額部分は2013年度までに65歳に引き上げられ、報酬比例部分は2025年(女性は5年遅れ)まで段階的に65歳に引き上げられている途上にあるが、報酬比例部分も含めて支給開始が65歳になってから以降のことも視野に入れた議論が必要になっている。

 この年金受給のあり方を巡る議論では、現在は最高齢で70歳からの年金受給開始となっているところを、さらに後倒しするのか? 保険料の納付を何歳まで可能にするのかなどの見極めも必要になる。

(4)同世代間の再分配機能の強化

 高所得者の年金給付のあり方も議論の対象になる。十分な所得のある高齢者には老齢年金の支給を停止してもよいという考えがある。また、公的年金等控除を含めた年金課税のあり方をどうするのかも検討課題の一つだ。

 「人生100年時代」という言い方があるが、これは昨年秋から始められた「人生100年時代構想会議」などでの議論をきっかけに、急速に広まり始めた言葉だ。平均寿命が伸びていることは事実だし、実際に多くの人が100歳まで生きる世の中がやってくるとして、その時代の70歳以降、80歳以降、90歳以降の人たちの生活態度が、どのようなものになっているのかは、想像が難しい。ロボットの社会進出が加速することによって、今の70歳にはできないような仕事を、20年先の70歳はロボットの介助によってやってのけるかもしれない。そのような社会の将来を見据えた議論を期待したい。

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