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iDeCoの商品数上限も35本に、デフォルト商品も明示へ=改正DC法の要件固まる

2017/05/10 19:55

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第6回 確定拠出年金の運用に関する専門委員会の様子

 iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の制度改正について議論している社会保障審議会企業年金部会 確定拠出年金(DC)の運用に関する専門委員会が5月10日、東京・永田町で開催され、議論の焦点となっている「運用商品数の上限」、および、「デフォルト商品(指定運用方法)の基準」について、まとめの議論が行われた。その結果、運用商品数上限に「35本」という案が示され、企業型DCに加え、iDeCoも同等とすることで、ほぼまとまった。また、「デフォルト商品」についても、選定についての考え方が示された。同専門委員会は今年2月に設置され、関係団体、労使団体等からのヒアリングを経て、政令として示す「運用商品数の上限」、および、省令として示す「指定運用方法の基準」について議論。5月10日の会合が第6回になった。

■運用商品数上限は「現状」を優先、上限超えは5年間で調整

 「運用商品数の上限」については、改正DC法の制定過程で企業型年金等において、運用商品を指定しないで放置する「不指図者」が少なからず存在すること、元本確保型のみの運用が過半を占めること等が問題視され、その不指図の要因のひとつに「運用商品数が多過ぎることによって選択することをあきらめてしまう」ことが挙げられたことによる。DC法は、第1条で「確定拠出年金制度は、加入者が自己の責任において運用の指図を行い、その運用結果に基づいた給付を受ける制度」と規定している。「多過ぎて運用できないのであれば、何本に限定すれば運用を行うのか」ということが議論の焦点になった。

 専門委員会で議論が始まる前の段階では、欧米のDC制度の事例を踏まえ「10本程度」を軸に議論が進むとの見方もあったが、関係団体からのヒアリングによって「20本~30本+α」という声が大きいことを確認。その後、厚生労働省が示した「運用商品提供数と不指図者の関係について(企業型年金)」の調査資料によって、運用商品数が36本以上になると不指図者の割合が急速に高まるという実態が示されたことで「35本」という数値が明確に意識されるようになった。

 5月10日の専門委員会では、「企業型年金の上限を35本」という案が示されたことに関しては、委員の間で特に異なる意見は出なかった。一方、「個人型年金についても、企業型を参考に同水準の上限としてはどうか」という点には、1人の委員から「iDeCoは個人が自由に運営管理機関を選べるので、企業型と同様の制限を設ける必要はない」という意見もあったが、その他7人からは、特段の反対意見は出なかった。商品数の数え方として「ターゲットイヤー型のみ、まとめて1本と数える」とされた。

■上限設定で運用商品の「品質」を再検証

 運用上限数を「35本」として考えると、現在のiDeCoプランの中では、運用商品数が65本のSBI証券、40本の岡三証券が、規定を上回ることになる。2018年6月の施行から「5年を超えない期間内」という経過措置の期間に、運用商品数を35本以内に減らすことが必要となる。運用商品数の上限を超えている2社は、できるだけ早いタイミングで削除対象商品について加入者に示す必要があるだろう。5年の経過措置期間があれば、削除対象商品を保有している加入者も十分に余裕をもって、商品の入れ替えを実行できる。

 委員会では「運用商品の除外の際に実務上留意すべき点」も示され、「信託報酬の水準」、「運用成績」、「除外後の運用商品全体の構成」、「手数料」、「当該商品の指図者数」など、具体的な項目を挙げ、加入者に情報提供した上で、除外手続を進めることとされた。この除外要件を考慮すれば、たとえば、同じ株価指数に連動するインデックスファンドであれば、信託報酬の高い方の商品が除外対象になることが想定できる。

 また、今回の改正によって「上限35本」の基準が示されたことによって、この基準内に収まっているDCプランにおいても、運用商品ラインアップの品質について改めて見直す圧力がかかる。委員からは「上限設定によって、本数が重要なのではない。ラインアップの全体構成、個々の商品の品質を再検証することが重要」という強い意見があった。

■デフォルト商品を法律で規定、「運用を指図したとみなされる」ことに

 「デフォルト商品」については、当初は米国の「適格デフォルト商品(QDIA=Qualified Default Investment Alternative)」に該当する基準を設ける議論が期待されたが、実際には「改正後の確定拠出年金法の規定は、運用商品の内容ではなく指定運用方法が目指す目的を定めたもの」との厚労省の説明によって、具体的な商品像を議論することはなかった。そして、デフォルト商品を設定するための基準として「長期的な観点(60歳まで継続して運用する)」、「物価その他の経済事情の変動により生じる損失」、「収益の確保」などの観点から検討し、「加入者集団のリスク許容度や期待収益等を労使・運管等で考慮・検討しながら、指定運用方法(デフォルト商品)にふさわしい商品を決定」とされた。

 委員からは、「デフォルト商品の基準を示すにあたって、元本が確保される・されないなどといったレベルの区分だけでなく、リスクの大小に応じて、期待収益率や短期的・長期的リスクの違い、購買力を維持できるかどうか、分散投資効果など商品のメリットデメリットをわかりやすく比較し、情報提供することが重要」という意見があった。また、「法律で定めるデフォルト商品というのは、事実上、そのプランのスタンダードな運用方法を提示しているといえる。制定にあたっては、事業主や運管は本気で真剣に議論して決定してほしい」という意見もあった。

 今回は、米国のQDIAのような適格商品の指定はしなかったが、既存の制度ではデフォルト商品は「法令解釈通知(ガイドライン)に基づく存在」だったものが、きちんと「法律で規定された存在」になる。そして、制度加入後に運用商品を指定しなかった加入者は、掛金を「デフォルト商品」に移されるが、「特定の期間(3カ月以上)・猶予期間(2週間以上)経過後に、運用の指図を行ったものとみなされる」ことになる。すなわち、デフォルト商品による損失等について、加入者自身が責任を負うことになる。これによって、「セーフハーバールール(デフォルト商品による損失を事業主等に負わさないという規定)」などの整備は不要になった。

■改正法施行で「自己責任において運用する年金」は戻れない道に

 今回の専門委員会での議論を追うと、「現状優先」が貫かれ、企業型DCを導入している事業主には極力負担がかからないような配慮がされた。これは、改正法によって一段と企業型DCの普及が進むことを切望しているがための配慮だったと感じる。運用商品数について、関係者からの要望にほぼ沿った「35本」という大きな数値を設定するのも、iDeCoを含むDC加入者の一層の増大に対して、国として大きな期待を寄せていることの裏返しなのだろう。

 また、デフォルト商品の議論でも「元本確保型が約54%を占めている」、「長期の運用において購買力が維持されることが重要(金利で増えない元本確保型では購買力は維持できない)」ということが盛んに強調された。デフォルト商品の選定において、元本確保型商品は排除されなかったが、運用に伴うリスクとして「インフレリスク」を筆頭にあげ、「元本確保型にも(インフレという)リスクがある」ことを明確に示そうとしている。もはや、「年金を自分で用意する」ことにおいて、「自己責任で運用する」ことは避けられないということだろう。

 DC法の第1条は、DC制度の目的について「個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受ける」、「国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与すること」と定めている。1文の中で、「自己責任」、「自主的な努力」など個人に責任があることを繰り返し強調している。もはや私たち国民は、「資産運用など関心がない」などとは言っていられないのかもしれない。

 現在、iDeCoの加入を促すにあたって強調されやすいのは「3大節税メリット」だ。「預金で積み立てるだけでも、所得控除メリットが受けられる」という点が前に出てきやすい。しかし、国の意図は、その先を目指している。iDecoや企業型DCは「自己責任で運用する制度」であるのだから、資産運用について国民的なレベルで「学び」、そして、ノウハウを身に着けることが重要だと強調している。iDeCoは始めるだけではなく、運用する手段として活用されることで価値がある。iDeCoの位置づけについて、私たち一人ひとりがしっかり考えなければならないのだろう。


    
    

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