資産管理コラム

消費増税でもiDeCo手数料は引き下げ! iDeCo普及へプラン改定が進展

2019/11/14 16:53

 10月1日の消費増税によって、iDeCo(個人型確定拠出年金)関連の手数料の水準も増税分がかさ上げされました。しかし、実際には手数料の引下げに動く金融機関もあり、消費増税の前後で比較すると運営管理機関手数料などが全般に低下したような印象を受けます。老後生活に備えた資産形成の必要性が広く国民レベルで意識される中、増税を受けてもなお、資産形成のコスト負担を増大させないような取り組みが進んだことは、iDeCo利用のすそ野拡大につながる動きとして注目されます。

消費増税でiDeCo管理コストも2%上昇・・・

 消費増税を反映してストレートに手数料額が増額されたのは、国民年金基金連合会(国基連)が徴収している掛金の収納にかかわる手数料です。月額103円(税込み)だったものが、10月以降は105円になりました。また、年金資産を預かっている信託銀行が徴収している拠出金の管理にかかわる手数料も、月額64円から66円になっています。

 また、増税による負担増は、運用商品の信託報酬(運用管理報酬)にも反映されます。たとえば、年率0.5%(税抜き)の手数料率は、税込みで0.54%でしたが、増税によって0.55%になってしまいます。信託報酬率に関する課税は、小数点以下の端数処理などがなく増税分がそのままオンされるので、分かりやすいのですが、それだけシビアに効いてきます。

 このように、増税によってiDeCoの運用管理コストがかさ上げされると、iDeCoを使った老後のための資産形成は、運用効率が2%悪化するため、それを嫌って、資産形成そのものをあきらめてしまう人も出かねません。なぜなら、2%のコスト増は現在の運用状況では簡単に埋められるものではないからです。

 いうまでもなく、10年国債利回りがゼロ%以下に沈むマイナス金利時代ですから、定期預金や保険商品という「元本確保型商品」の運用利回りはゼロ%です。国基連や信託銀行、運営管理機関に支払う手数料は毎月の掛金から控除されるので、増税で増えた分だけ年金資産の積上げ額の減額につながります。また、運用商品の信託報酬の増税分は運用資産額の目減りになります。増税は、iDeCoの運用にとって積立額(掛金)の面でも、運用している年金資産の面でもマイナスに作用するのです。

増税分を上回る手数料率の低減を実現

 ところが、現実の動きは、増税の悪影響を緩和しようという動きが強まった関係で、かえって、サービス内容が一段と良くなるという結果になっています。大きな変化が見られたのは、運営管理機関が徴収する手数料の減額です。わかりやすいのは、10月1日から信用金庫業界で始まった「しんきんiDeCo」の採用です。従来、多くの信用金庫が提供していた業界共通のiDeCoは運営管理機関手数料379円が標準でした。「しんきんiDeCo」では、303円になっています。手数料が20%も減額されていますので、2%増税などを吹き飛ばして、加入者のメリットの方が大きくなりました。

 「しんきんiDeCo」は、信金中央金庫とジャパン・ペンション・ナビゲーター(J-PEC)が連携して生まれた新プランです。従来は、各信用金庫が個々に運営管理機関として制度を立てていましたが、新プランでは信金中金が運営管理機関となり、コールセンターの運営業務などをJ-PECに委託することで事務負担の軽減を図っています。各信用金庫は運営管理機関(信金中金)から受付業務を受託している金融機関となりました。

 一方、東京海上日動火災保険のプランを採用する信用金庫もあります。東京海上日動の標準プランの手数料は月額319円ですので、従来プランと比較して月間で15%程度の手数料率の引下げになっています。東京海上日動のプランは、複数の地域銀行でも従来のプランを販売停止にして、新たに採用する動きがあります。

 このような運営管理機関手数料の引下げが、今回の消費増税と前後して広く行われています。たとえば、福岡銀行は6月に運営管理機関手数料を引き下げた新プランに改定しました。1カ月当たり432円だった手数料を303円(増税後は309円)にしています。また、9月から取り扱いが始まった三井住友銀行の新プラン「みらいプロジェクトコース」は、運営管理機関手数料がゼロです。従来の「標準コース」が月間260円ですので、新コースに切り替えることで運用コストが大幅に低下します。

低コストファンドを投入し歴史的な低コストに

 さらに重要なことは、新プランの提供に合わせて、ラインナップされている投資信託の信託報酬が一段と引き下げられていることです。たとえば、「しんきんiDeCo」の国内株式インデックスファンド(対象インデックス=TOPIX)や外国株式インデックスファンド(同=MSCI-KOKUSAI)の信託報酬は年0.154%になっています。以前のプランでは国内株式インデックスファンドが年0.88%、外国株式インデックスでは年1.045%でした。外国株式インデックスファンドのように、年1.045%だった信託報酬率が0.154%にまで下がると、そのパフォーマンスに与える運用は無視できないくらいに大きくなります。

 新プランの採用は、既存のiDeCo加入者にとっては、現在の運用ポートフォリオを一度清算し(いったんは現金化するため、マイナス評価の運用資産は強制的に損失がでます)、新たなプランに加入し直す手間も費用もかかるため、一時的な損失になりますが、60歳まで20年、30年という加入期間中はずっとかかってくる手数料が、切り替えによって減額されるメリットは大きいといえます。新規加入者にとっては、加入コストが低減するメリットしかありません。iDeCoの既存加入者は加入対象者(公的年金被保険者数6733万人=2018年3月末現在)の2%程度に過ぎないという段階だからこそ、新規加入者にアピールできる内容にすることは重要です。

 iDeCoに関する手数料については、iDeCoの掛金に適用される所得控除の節税効果が大きく、従来は比較的高い手数料水準でも問題視されることはありませんでした。たとえば、課税所得300万円(所得税率10%)の人が、毎月2万円(年額24万円)の掛金を拠出した場合、住民税(10%)と合わせて年間で4万8,000円の節税効果があります。毎月のiDeCoの手数料が721円(国基連105円+信託銀行66円+運営管理機関550円)だとしても、年間で8,652円ですから、まだ、節税効果が4万円弱もあるのです。運営管理機関手数料が100円、200円違っても、それほど大きな問題とは感じられませんでした。

 しかし、iDeCoを使った老後の資産形成を考える人が増えるほど、サービスを提供する金融機関の競争意識も高まり、運営管理機関手数料を無料にする金融機関が現れました。ただ、運営管理機関手数料には、記録関連運営管理機関に支払う手数料も含まれていますから、それを無料にしたプランでは、iDeCoの1件当たり毎月数百円の記録関連費用をサービスを提供している運営管理機関が負担する必要があります。iDeCoの運用商品の信託報酬が年0.14%(販売会社の手数料率0.06%)だとすると、運用資産残高が100万円になっても、年間で得られる手数料収入は600円(月額50円)ですから、記録関連運営管理機関への手数料を賄えるようになるまでにも数十年が必要です。

 一方、運営管理機関が相次いで手数料を引き下げる中、国基連が徴収する月額105円の手数料が高すぎるのではないかという議論も出ています。国基連としては、加入手続きの電子化(印鑑レスとペーパーレス化)に向けての膨大なシステム改修費用の負担のため、妥当な金額としていますが、加入者増とのバランスを考えながら、適切な料金設定をしていくとも表明しています。iDeCo加入者数が200万人、300万人と増えていけば、国基連の手数料の引き下げも現実のものとなるでしょう。

 このように、消費増税を潜り抜けて、iDeCoの商品内容は、グンと加入者にうれしいサービスとして磨きがかかりました。運営管理機関手数料が無料、そして、運用商品のラインナップで信託報酬が年0.2%以下の商品を取り入れている運営管理機関は、確定拠出年金のサービスが始まって以来、歴史的に低い運用管理コストでサービスを提供しています。余裕のある資金を使って、iDeCoの活用を検討するタイミングでしょう。

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