資産管理コラム

iDeCoの指定運用方法が示唆する新時代、リスク取る資産運用で高齢社会を豊かに

2018/06/05 16:16

 iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の「指定運用方法」が次々に公表されています。指定運用方法とは、iDeCoに加入後、一定期間(3カ月以上)運用の指図をしなかった場合に、自動的に掛金を預ける商品のことです。この指定運用方法の選定によって、iDeCoの商品性が大きく異なって感じられるようになります。来年7月からは、銀行や証券会社の窓口で、iDeCoの運用商品の説明まで踏み込んでできるようになりますが、その際に「当社iDeCoの指定運用方法は・・・」という説明が加わると、ガラリとiDeCoの印象が変わるのです。

指定運用方法に投資信託を選んだのは、りそな銀行、楽天証券、さわかみ投信

 国民年金基金連合会が発表しているiDeCoの「指定運用方法」によると、5月30日現在の届出受理で運営管理機関21社が指定運用方法を選定しています。この中で、りそな銀行(りそなつみたてiDeCoプラン)、楽天証券、さわかみ投信の3社が指定運用方法に投資信託を選定しています。りそな銀行は「ターゲットイヤーファンド」、楽天証券は「楽天・インデックス・バランス(DC年金)」、さわかみ投信は「さわかみファンド」を選びました。その他の金融機関、みずほ銀行、横浜銀行、北陸銀行、大垣共立銀行、労働金庫、SBI証券は、指定運用方法は定期預金です。

 りそな銀行の「ターゲットイヤーファンド」は、掛金積立が終わる60歳になる年(ターゲットイヤー)までの残存期間が長いほど株式等の成長性や値上がり益の獲得を重視した資産を多く組み入れ、残存期間が短くなるに従って債券等の安定性を重視した資産への投資比率を高めていきます。楽天証券の「楽天・インデックス・バランス(DC年金)」は、全世界株式15%、投資適格債券(為替ヘッジあり)85%の比率のバランスファンド。さわかみ投信の「さわかみファンド」は国内株式のアクティブファンドです。

 指定運用方法を投資信託にした3社は、それぞれに異なるリスク特性の商品を選んでいますが、共通していることは、元本の保証がないということです。「運用商品の指定がない場合、元本保証のない投資信託で掛金を運用します」と説明を受けたらどうでしょう? 少し身構えてしまいませんか? そもそもiDeCoという"個人年金"の加入にあたって「元本保証がない」という説明が出てくることにビックリしてしまうかもしれません。それほど、指定運用方法に投資信託を選ぶと、iDeCoの印象が変わります。

iDeCoの本質を明示する確定拠出年金法の第一章第一条

 iDeCoは「自分で準備する年金」と一般に説明されますが、実際には「個人又は事業主が拠出した資金を個人が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受ける」(確定拠出年金法の第一章第一条)という制度です。「運用の結果によって年金給付額が左右される投資商品」といえるほど、iDeCoと資産運用は不可分です。

 今年5月に導入された「指定運用方法」の制度は、「運用の指図をしない場合」に限って適用されるので、iDeCoが運用の指図を前提にした制度であることを明確にします。元本確保型商品を指定運用方法に選定している運営管理機関も、この「iDeCoは運用指図する制度である」ということを伝える重要なステップを踏んでいるといえます。

 運用の指図をするしないに係りなく、iDeCoを始めることによって、「掛金の全額所得控除」という確実に得られる大きなメリットは得られたため、資産運用にまで踏み込んだ説明をしなくても加入者にアピールすることができました。「税額控除を受けながら、将来の年金を自分で準備する」という制度だとiDeCoを割り切れば、「iDeCoは元本確保型で資産を積み立てるだけで十分」という考え方もできます。

 ただ、「運用しない」ということも、iDeCoでは「指図する」必要があります。現在のように、日銀が意図的に金利を低く抑えている状況では、預金で積み立てれば、インフレに負けてお金の値打ちが下がることを受け入れるということになります。昨年のインフレ率は0.5%ですから、ゼロ%金利の定期預金では0.5%の目減りしたことになります。(もっとも、掛金の所得控除によって所得税を納税している人は、最低でも掛金の15%が戻ってきますので、インフレ率程度の目減りは意識しなくてもよいともいえますが・・・)

 ネットを中心にiDeCoを取り扱っている楽天証券、さわかみ投信では、指定運用方法についてニュースリリースやQ&Aでアナウンスはあるものの、iDeCoの制度説明の一連の流れにおいて、指定運用方法を取り上げて説明するところまでは至っていません。楽天証券は、iDeCo専用のスマホサイトで資産状況の確認ができるようにしたり、iDeCo専用のAIチャットをLINEで提供開始するなど問い合わせ機能を拡充しています。りそな銀行では、iDeCo専用の相談窓口である「つみたてプラザ」では、「運用リスクを取りたくないお客さまには運用方法を定期預金に指定してくださいと説明しています」(信託ビジネス部)ということでした。

兼業規制が緩和される来年7月からiDeCoもNISAと並ぶ新時代

 銀行等のリアルの店舗で営業している金融機関には、兼業規制があって来年7月までは、支店の営業員がiDeCoの運用商品について説明することができません。指定運用方法についても、運用商品に関する説明なので現時点では支店では説明できませんが、兼業規制が緩和される来年7月からは、銀行等の支店でもNISA(少額投資非課税制度)、つみたてNISAと同じようにiDeCoの説明が始まるでしょう。本来であれば、iDeCoも「投資を通じて資産形成を行う手段の1つ」ということもできますから、NISAと並んで説明されることに違和感はありません。

 指定運用方法によって、運用指図をしない加入者を自動的に投資信託による運用に流して、資産運用ブームをつくり出すことに成功したのがアメリカです。確定拠出年金を通じて資産運用が一気に身近になった米国の人々は、年金資金以外でも運用商品の活用をするようになり、個人金融資産を大きく増やすことに成功しました。日本では、いまだに資産形成が預貯金を中心に行われています。iDeCoという年金制度が、つみたてNISAなどの投資商品と同列で検討される時代を迎えることによって、「資産運用の時代」が広く一般化するのかもしれません。

 高齢化が一段と進む中で、「現役時代に蓄えた資金で老後を安心して暮らす」という考え方は広がるでしょう。その時に、積み立てた資金がインフレで目減りしていては、老後の豊かさを味気ないものにしてしまいます。「インフレ率+α」で資産を残すためには、株式等の成長資産の活用が欠かせません。りそな銀行、楽天証券、さわかみ投信の3社は、次の時代を先取りした制度にいち早く衣替えしたといえます。今後は、指定運用方法の導入も含めた説明の仕方を工夫することによって、「年金と運用」について納得感の高い解説が期待されます。

【関連記事】
ゲタを履いて荒波を乗り越えよう! iDeCoの指定運用方法に投信が選ばれるわけ
iDeCoでも発表が相次ぐ「指定運用方法」、iDeCoの制度理解を深める一助に
「りそなつみたてiDeCo」の取扱い開始、指定運用方法にターゲットイヤー型ファンド