資産管理コラム

ゲタを履いて荒波を乗り越えよう! iDeCoの指定運用方法に投信が選ばれるわけ

2018/05/24 16:35

 iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)に認められた「掛金の全額所得控除」のメリットは、資産形成を投資信託(投信)で行うという点で、大きな優位性になります。高ゲタを履いて水辺を歩くように、揺れる市場の荒波を乗り切って、悠々と高みをめざす余裕を与えてくれるようです。この5月から始まった確定拠出年金への「指定運用方法」に、投資信託を選ぶ動きが続いているのも、掛金の全額所得控除という高ゲタの影響が小さくないと考えられます。

掛金の全額所得控除で掛金額の15%~55%を確保

 掛金の全額所得控除とは、iDeCoの掛金が課税される所得金額から差し引かれる対象になること。所得税と住民税の税額が、本来の税額よりも圧縮される効果があります。これは、掛金をかけている間は続きます。例えば、課税所得250万円の人が、毎月1万円の掛金でiDeCoに加入しているとすると、1年間の掛金合計額12万円が課税所得から控除されます。これによって、本来の税額(250万円×20.21%-97,500円)40.77万円が、38.34万円(238万円×20.21%-97,500円)になり、納税額が2.43万円少なくなるのです。

所得税・住民税の税率

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 掛金が12万円ですから、節税メリットの2.43万円は掛金の20.25%に相当します。つまり、掛金(投資額)に対して所得税・住民税率分の収益が得られるのです。ゼロ金利時代に20%の収益が確実に得られる金融商品は他にありませんから、iDeCoはゼロ金利の元本確保型商品を積み立てるだけでも大きなメリットが得られるといわれます。

 冒頭で、「高ゲタを履いたようなもの」と言ったのは、この節税部分に相当する20%を指しています。ゲタの高さは、課税所得によって異なりますが、15%から最大は55%です。課税所得は年収から、基礎控除(38万円)、社会保険料(概ね年収の15%程度)を差し引いて求めます。たとえば、年収300万円の人は、所得税率は概ね5%、年収600万円の人で概ね10%、年収が1,000万円になって所得税率20%というのが目安です。年収1,000万円の人がiDeCoを始めると、約30%の収益が自動的に上積みされる計算になります。

投資した場合のリスクは株式で年率23%程度

 そこで、投資信託の長期の収益率を見てみると、過去30年間のリスク(標準偏差)は最大の外国株式(MSCI KOKUSAI 配当再投資、円換算)で年率23.61%になっています。たとえば、年収600万円の人であれば、掛金の所得控除で20%程度の上積みがありますので、外国株式の価格変動のリスクを概ね吸収してくれることになります。その上で、30年間の期間があれば、年率9.07%の投資収益をあげることができました。年率9.07%で毎月1万円を30年間積み立てた場合、30年後には約1,738万円(掛金合計は360万円)を作ることができます。

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 もちろん、これはあくまでも過去の実績の話です。今後は、どのような価格変動がやってくるのか分かりません。過去30年間に国内株式(TOPIX配当込み)に投資していたとすると、リスクは年率22.93%と外国株式と変わりませんが、投資収益は年率0.55%になってしまいます。ちょうど30年前は日本の株価はバブルのピークを付けていました。毎月1万円を投資したとすると、0.55%で計算すると391万円(掛金合計は360万円)にしかなりません。

 投資信託を使う場合は、「どの資産に投資するのか?」ということによって投資成果が大きく変わってきます。国内株式と外国株式では、大きな差が出ました。投資する資産を複数に分けるようにしましょう。例えば、1万円の掛金を国内株式、国内債券、外国株式、外国債券に4等分して2500円ずつ積み立てていくという考え方もあります。債券の方が株式よりもリスクが相対的に小さいので、株式の持っている年率20%を超えるような高いリスクを抑えることができます。このように債券を加えた運用をすると、所得控除率が15%でも投資リスクを気にせずに運用をすることができます。

 過去30年間を振り返ると、国内株式、国内債券、外国債券、外国株式のどの資産を選んでいても、マイナスのリターンになることはありませんでした。利息や配当を生む債券や株式に長期にわたって投資すると、マイナスの運用成績になることはごくまれのことです。まして、毎月一定額を積み立てていくiDeCoのような投資の仕方をしていれば、なおのことマイナスリターンになる確率は小さくなります。

 多くの人にとって、「上がるか下がるかわからない株式に投資することは怖い」ことだと思います。ただ、たとえ株価が下がったとしても、その分は事前に税控除でカバーされているとすれば、安心感が大きいのではないでしょうか。大事なことは、「TOPIX」や「MSCI KOKUSAI」といった株価指数のように十分に分散されたポートフォリオに投資することです。そして、株式だけではなく、債券も加えてリスクの低減を考えることも大事だと思います。何より、iDeCoを始めること。iDeCoで投信の運用を始めることが、将来の年金暮らしに余裕を持つために大事なことではないでしょうか。

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