資産管理コラム

iDeCoでも発表が相次ぐ「指定運用方法」、iDeCoの制度理解を深める一助に

2018/05/08 18:34

 iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の「指定運用方法」の発表が活発になってきました。4月16日に、さわかみ投信が「さわかみファンド」を指定運用方法として発表してから、4月24日までに合計16機関が発表しています。新たに発表した15機関(SBI証券、大垣共立銀行、北陸銀行、そして、12の労働金庫)の指定運用方法は、いずれも「定期預金」ですが、指定運用方法を告知することによって、iDeCoの制度理解が一段と深まる効果が期待されます。

法律で規定された「指定運用方法」とは?

 「指定運用方法」とは、3カ月以上にわたって加入者が自身で掛金の配分設定をしなかった場合に、2週間以上の猶予期間を経て、加入者の掛金を運用することになる商品のことです。「デフォルト商品」ともいわれます。これまでも、加入者が掛金の配分方法を指定しないケースは存在し、その場合は、「初期設定の商品」として主に定期預金等の元本確保型商品で運用されてきました。2018年5月1日から、確定拠出年金法等の一部を改正する法律が施行され、制度として明確な枠組みができました。

 「指定運用方法」も「初期設定の商品」も、同じようなものなのですが、法律によって規定された効果は、「指定運用方法で、もし、運用上の損失が出た場合、その運用方法を指定した運営管理機関には、その運用損失について責任を負わない」ということが明確になりました。改正法は、「指定運用方法」を設けることによって、確定拠出年金(企業型、および、個人型)において、掛金の50%~60%超が配分されている定期預金をはじめとした元本確保商品から、運用商品にシフトすることを期待しているといえるでしょう。

 指定運用方法の規定がない場合、たとえば、投資信託など価格変動商品を初期設定にした場合、それによるマイナスの運用成績を誰が補てんするのかという問題がありました。誰が損失負担するにせよ、投資信託など価格変動商品は損失可能性が大きいことから、ごく一部を除いて、初期設定には定期預金などの元本確保型商品が選ばれてきました。また、初期設定を定期預金にして、その金利が0%だとして、インフレ率が2%だった場合、この2%分の実質的な目減り分は、誰が損失補てんするのかという問題も内包していました。

 法律で規定された「指定運用方法」は、加入後3カ月以上の「特定期間」を経ても掛金の配分指定がない加入者については、特定期間の終了を通知してから2週間以上の「猶予期間」を経て、なお配分指定がない場合に「指定運用方法」が適用できるとしています。この特定期間や猶予期間などの十分な期間に、運用方法を指定することを促してもなお、運用方法を指定しなかった責任は、加入者自身にあるという判断ができるということです。

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出所:モーニングスター作成


iDeCoでも広がる「指定運用方法」

 そもそも、「指定運用方法」に関する議論は、企業型確定拠出年金制度において、制度説明を十分に受けないまま(たとえば、会社での制度説明会に出席できなかった、あるいは、説明会で十分に納得できなかった場合など)制度に加入した場合、運用方法を指定することすら自覚がないままに、初期設定の元本確保商品に掛金が積み上がっていくことを放置して良いのだろうかという問題意識から議論が進められました。確定給付年金から確定拠出年金へと制度変更を行った場合は、確定給付型で一定水準の想定利回りで運用していたものが、確定拠出年金で0%金利の預金になってしまうと、従業員にとってマイナスになりかねないという懸念もありました。

 したがって、「指定運用方法」の決定にあたっては、確定給付年金から制度移行をした場合には、確定給付年金の想定利回りに配慮した商品選定を行う必要があるという議論もありました。また、確定拠出年金の運用に関する投資教育について「配慮義務」から「努力義務」へと企業の取り組みを、より強く促して確定拠出年金への社内の理解を深めるように制度改定が実施される要因のひとつにもなっています。

 実際にはiDeCoでも指定運用方法が設定される流れになり、確定拠出年金制度が「自分で運用する年金」であるという位置づけが、より明確になったといえます。iDeCoは、企業型とは違って、制度内容については、自分で調べた上で加入を検討していると思われますが、たとえば、加入を申し込んだ後で、掛金の配分等の指示をせずに放置した場合に、「運用商品を配分指定しない場合は、定期預金(1年)で運用されます」という案内を受ければ、改めて運用商品の配分指定することが促されますし、制度の理解は一段と進むと思います。

 SBI証券は、定期預金(1年)を指定運用方法に選んだ理由を「加入者の運用指図権を考慮し、元本保証かつ預金保険制度の対象であり、安全性が高い」としています。大垣共立銀行(1年定期預金)と北陸銀行(5年定期預金)は、「加入者の年代や投資経験等に照らし、許容できるリスクが低い加入者向けの確定利回り商品として、あらかじめ定められた利息収入が得られる」定期預金を選定したとしています。10年定期預金を指定した労金各金庫は「預金保険の対象であり、長期に安定した運用が可能である」としています。労金の場合は、2週間以上と定められている猶予期間を31日として、より慎重な指定運用方法の適用にしています。

 iDeCoの指定運用方法を定期預金にしている運営管理機関は、「安全性重視」で元本確保商品を選んだようです。定期預金であれば、待機資金のような位置づけで、いつでも他の運用商品に乗り換えることができるという判断もあるのでしょう。また、SBI証券のように、指定運用方法は変更があり得ることを明示し、利用者の意向等を確認しながら、今後の商品選定を行うところもあります。

 今回の指定運用方法の設定が、iDeCoの理解を一段と促すきっかけのひとつになるよう、運営管理機関の積極的な情報提供が期待されます。

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