資産管理コラム

ジワリ進む確定拠出年金改革、5月開始のデフォルト商品がiDeCoを変える

2018/04/18 15:32

 国民年金基金連合会は、4月16日からiDeCo公式サイトで「指定運用方法及び当該指定運用方法を選定した理由」の公表を開始しました。5月1日の改正DC法施行日を前に、指定運用方法(いわゆる、デフォルト商品)についての周知を図る一環と考えられます。公表第1号となったのは、さわかみ投信で「さわかみファンド」を指定運用方法に選定しました。4月20日に再開される社会保障審議会企業年金部会では、「確定拠出年金における兼務規制について」議論される予定になっていますが、今年1月から掛金の年単位化が始まったことをはじめ、確定拠出年金改革がジワリと進んでいます。

「指定運用方法」の運用結果は収益も損失も全て加入者に

 「指定運用方法」とは、加入者が掛金の運用商品を指定しなかった場合に、自動的に購入される商品です。これまでも、運用商品を指定しなかった場合、自動的に資金が振り向けられる商品はありました。主に、定期預金などの元本確保型商品が自動的に割り当てられてきました。「待機資金」のような意味合いもあったのでしょう。今回の措置は、政省令として「指定運用方法」の基準を定め、かつ、指定運用方法の運用の結果は加入者本人に帰属する旨を明確にした上で導入されるものです。

 運用結果について加入者が会社に文句をいうことはできません。これを担保するため、掛金の入金から3カ月以上の期間を「特定期間」として加入者に運用指図することを働きかけるようにします。そして、特定期間の期限が到達したことについて、記録管理機関(RK)から加入者に対し「掛金は指定運用方法で運用される」旨の通知を行います。さらに、その通知から2週間以上の「猶予期間」を定め、そののちに、「指定運用方法」による運用が開始されます。

 加入者は、「運用方法を指定するように」ということを、「加入時」、「特定期間」、「特定期間の終了時」の3回は必ずアナウンスされることになります。しつこいくらいに運用を指図するように促されても、なお、運用方法を指定しないため、その結果への責任は加入者自身にあるという建てつけになっています。

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出所:モーニングスター作成


問われるフィデューシャリー・デューティー

 「指定運用方法」の基準としてポイントになっているのは、「インフレに負けない」ということです。60歳になるまでは取り崩すことができない確定拠出年金ですから、掛金の運用期間が30年以上になるという人も少なくありません。30年前の物価と比較すると、様々なモノが値上がりしています。消費者物価指数でみると、平成元年の「総合」が88.5だったものが、平成29年には100.4です。平成元年(1989年)4月の消費税導入(3%)によってハガキは41円になりましたが現在は62円です。タクシーの初乗り運賃は520円が730円になりました。

 物価は上昇するものであれば、2000年以降20年にわたってゼロ金利を続けている預金=元本確保型商品では、この物価には勝てないということになります。「指定運用方法」では預金などの元本確保型商品を指定することを禁止してはいませんが、投信などの変動商品を指定する方が望ましいとされています。30年前の預金金利(1年定期)は3%台ですので、預金でお金が殖やせないわけではないのですが、当時の実質経済成長率は5%台です。今後、日本の総人口が減少していく中で、名目成長率1%程度の低成長が続くと見通されていることから、預金等の金利に期待はできないと目されるためです。

 運営管理機関は、フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)の観点からも、「指定運用方法」の選定にあたっては、慎重な判断が求められます。そして、その選定理由の説明についても、積極的に実施する必要があります。

 さて、さわかみ投信の場合、運用商品は「定期預金」「さわかみファンド」「DCダイワ物価連動国債ファンド」の3本です。その中から、「さわかみファンド」を選んだ理由として、「インフレを上回る運用収益へのニーズは高いと考えられるため、ある程度の価格変動リスクは許容されると判断した」「超長期の運用となるため、運用収益のみならず、運用会社の経営の安定性と一貫性が極めて重要である」という点をあげています。

 「さわかみファンド」と「DCダイワ物価連動国債ファンド」を比較すると、トータルリターン10年(年率)では6.39%と1.64%、標準偏差(リスク)では、19.17と5.39という値になります。「さわかみファンド」の方が、リターンもリスクも大きいという結果になっています。インフレへの対策だけを考えるのであれば、「DCダイワ物価連動国債ファンド」も選択肢ではありますが、より高いリターンをめざす「さわかみファンド」を指定商品にしたのは、さわかみ投信が提供するiDeCoの特徴を表しているといえるでしょう。

「さわかみファンド」と「DCダイワ物価連動国債ファンド」

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※2018年3月末基準
出所:モーニングスター作成


「指定運用方法」の設定は、制度の理解を促す

 大事なことは、「指定運用方法(デフォルト商品)」が示されることです。「運用の指図をしない場合は、『さわかみファンド』で運用されます」とアナウンスされることだと思います。このようにアナウンスされると、加入者は「なぜ、『さわかみファンド』で?」と思うでしょう。「ファンドは、損することもある。なぜ?」と思うことが大事です。ファンドが嫌な加入者は、定期預金を選ぶこともできます。自ら選んで定期預金にするという判断が挟まることが大事です。

 年金のような長期の運用において、「株式」という成長資産(リスク資産)を組み入れることは世界の常識になっています。日本の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の他、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)カナダ年金制度投資委員会(CPPIB)、ノルウェー政府年金基金(GPFG-G)など諸外国の公的年金も株式を中心に運用しています。

世界各国の公的年金運用

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 各運営管理機関が、それぞれのiDeCoについて、指定運用方法として何を指定するのか? 今後の発表が待たれるところですが、指定運用方法を設定することによって、その指定理由が広くアナウンスされることが大事になります。iDeCoとは「自らの意志で運用する年金」です。指定運用方法の導入によって、このiDeCoの大原則が広く加入者に周知されることによって、制度への理解が一段と深まることが期待されます。

 まして、企業型においては、掛金の拠出を企業が行い、正社員であれば特に希望しないでも自動的に確定拠出年金に加入させられ、そもそも加入していることすら自覚がないという加入者が少なくありません(平成26年のフィデリティ退職・投資教育研究所の調査では約30%)。結果的に、加入以来、運用の資産配分変更を1度も行っていない加入者が約70%と多く(確定拠出年金総合研究所の加入者調査)、加入者の40%程度が自分の運用の状況が分からない(企業年金連合会 第2回確定拠出年金に関する実態調査)という状況です。企業型DCでは「指定運用方法」を決定し、その内容を広く加入者(社員)に伝える努力が必要です。

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