資産管理コラム

第3号被保険者や非正規社員こそ、年金にしか使えないiDeCoを始める理由がある

2018/03/15 18:01

 厚生労働省は3月14日に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の改訂版を公表しました。「終末期医療」を「人生の最終段階における医療」に名称変更しています。「人生100年」という言葉が、いろんな機会に聞かれるようになりましたが、この新しいガイドラインも、人生100年におよぶ長寿を見据えた考え方を示しているようです。100歳まで生きる時代を迎えると、これまでとは異なる人生模様が織りなされ、しっかりした老後の備えをひとり一人が用意する必要がありそうです。

 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」は、人生の最終段階での「積極的安楽死」を前提としていません。安楽死は、これまでの判例などで、きわめて限られた条件下で認めうる場合があるとされていますが、適法となる要件を示すことすら難しい問題としています。ですから、生活するにあたって多少の苦痛があったとしても、寿命が来るまでは生き続けることになると考えましょう。苦痛を緩和するケアを受けるためには、医療やケアを受けるため、それなりに費用の負担も発生することになるでしょう。何も備えなく、公的年金頼りで老後生活を送ることになると、極めて厳しい生活になりかねません。

老後のモデルケースは夫婦が前提、しかし、増える単身の高齢者

 老後の年金受給に話が及ぶ時、「夫婦のモデルケース」の例が出てきて、月額20万円超という公的年金があり、現在の高齢無職世帯の消費支出の水準と比較して、毎月5万円程度は貯蓄を取り崩して生活しているという話になります。「人生100年」を考えると、当然、いつまでも夫婦2人の生活が続くわけもありません。どちらかが病気や事故で亡くなることもあるでしょうし、65歳を超えてからの超熟年離婚もあるでしょう。65歳で年金をもらい始めてからも30年以上の人生が残っていることが前提になるのですから。

 実際に、65歳以上の単身世帯が急速に増えています。現在、65歳以上の高齢者に占める1人暮らしは女性で20%程度、男性で13%程度ですが、2035年には女性は23.4%、男性は16.3%が1人暮らしになっていると考えられ、その比率は高まる方向です。20年もしない間に、女性の4人に1人は1人暮らしの高齢者ということになる見通しです。


1人暮らし高齢者の動向

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 日本年金機構によるモデル世帯(夫が厚生年金に40年加入し、妻が第3号被保険者を含め国民年金を40年納めた場合)の年金月額は約22.1万円。内訳は、夫の老齢厚生年金が約9.1万円、老齢基礎年金が約6.5万円、妻の老齢基礎年金が約6.5万円となっています。ここで、もし夫が亡くなってしまったら、妻は老齢基礎年金の約6.5万円だけで生活していくことになります。年金は、受給者が死亡すると、支給が打ち切られます。死亡を届けないで不正に年金を受け取っていると、不正受給分は返さなければならないなど、厳しく運営されています。

非正規社員の公的年金の支給見込み額も厳しい水準

 この老齢基礎年金だけしかもらえない高齢単身者の問題は、専業主婦(夫)だけにとどまりません。非正規で厚生年金に加入していない人も等しく考えなければならない問題になります。2016年10月からは、週30時間以上働く人、また、従業員501人以上の会社で週20時間以上働く人が厚生年金保険・健康保険の加入対象になりました。2017年4月からは、労使の合意があれば、従業員500人以下の会社でも加入対象となるなど、非正規社員にも厚生年金でカバーしようという動きが広がっています。

 ただ、非正規社員が厚生年金の対象となっても、厚生年金として上乗せされる金額が限定的(毎月本人負担の保険料8,000円で、40年間加入で受取る厚生年金1.9万円など)であることは注意が必要です。また、短時間就労者やダブルウォーカー(複数の職場で短時間労働を掛け持ち)などは、制度の枠外となっています。非正規で働いている人は、何等かの自助努力による備えを考えましょう。

 退職後の年金としての資金を貯える手段としては、iDeCo(個人型確定拠出年金)は優先的に考えられます。何より、60歳までは引き出せないので、iDeCoに入れた資金は老後資金として先送りされます。ネックは、口座管理手数料が毎月かかることですが、運営管理機関手数料が無料のところが増えています。国民年金基金連合会と資産管理機関手数料だけだと、月額167円(年間2,004円)で済みます。第3号被保険者で月額2.3万円の掛金にすると、手数料率は0.72%。老後まで資金を先送りする手数料と割り切ってはいかがでしょうか? 収入がある人は、所得控除メリットで口座管理手数料はカバーできます(年収200万円であれば、掛金の15%相当分ですので、月額1万円の掛金で年間の所得税・地方税の戻りが1.8万円になり、2,004円等の手数料は十分にカバーされます)。

毎月2.3万円の掛金で2,000万円が作れる?

 iDeCoを使う場合は、長期の運用期間が確保できますから、できるだけ株式を投資対象とした投資信託を選ぶように考えましょう。たとえば、あなたが30歳で、60歳までの30年間、毎月2.3万円の掛金をずっと続けた場合、先進国株式に投資すると(MSCI KOKUSAI指数に連動する投資成果をめざす投資信託を利用)、60歳に到達した時点で2,254万円になっています。元本828万円の2.7倍の資産が得られた計算です。同様に、40歳のあなたが、20年間を積み立てたとすると、1,018万円の資産が作れたことになります。いずれも、2017年12月末までの30年間、20年間の結果ですから、今後も同じというわけではありませんが、毎月2.3万円という掛金でも1,000万円、2,000万円という比較的まとまった資金が用意できる可能性があることは大事です。


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 さらに、運用しながら取り崩していくと、2,254万円は、年率3%の運用ができれば、毎月9.1万円を32年間にわたって取り崩すことが可能です。65歳で取り崩しを始めれば、97歳まで資金が枯渇しない計算になります。毎月9.1万円は、厚生年金の受給額に匹敵するほどの金額です。夫婦存命の期間はiDeCoの資金を使わないで、取り崩し開始年齢を後倒しすれば、毎月の取り崩し額をより多くしても良いという計算もできます。老後のために、自分名義の年金資金があるということは、「人生100年時代」に心強いことだと思います。

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