資産管理コラム

「現金・預金好き」いつまで続けますか? 伸び悩む日本の個人金融資産

2018/02/27 17:16

日本人は「現金・預金好き」といわれます。2017年9月時点の個人金融資産に占める「現金・預金」の比率は51.1%。米国が13.7%(2015年末)、英国が24.4%(同)と比較して、その比率の高さが際立っています。この結果、米国の家計金融資産が1995年から20年あまりで3.11倍、英国で2.27倍に拡大したことに対し、日本は同じ期間で1.47倍と、日本の家計資産の成長が極めて限定的になっています。日本の家計は、「資金を預金に置いておいたため、儲け損ねた」ように見えます。高齢・人口減少社会となって経済成長が期待しがたい日本において、「お金を活かして将来に備える」という心構えが以前に増して重要になっています。

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出所:平成28事務年度 金融レポート


 米国が金融資産が大きく成長した背景には、株式等の成長資産を多く保有しているからだといわれます。実際に、2016年の家計の金融資産の伸びを要因分解してみると、米国で474兆円増加したうち343兆円分(増加額全体の約72%)は運用リターンによる伸びでした。日本は同じ期間に31兆円の増加になっていますが、うち運用リターンによる増加は10兆円(約32%)に過ぎません。日米ともに、資金流入による家計資産の伸びは1.48%(米)と1.15%(日)と大きな開きはないものの、資産全体の伸び率が5.7%(米)と1.7%(日)と開いてしまいます。日本人がゼロ金利の預金で資産を積み上げ、米国はより運用リターンの高い資産で運用しているからでしょう。英国は、個人金融資産の総額では日本の半分程度ですが、2016年の資産の伸び(70兆円)では日本を大きく上回りました。伸びた要因の大半は運用リターンにあります。
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出所:平成28事務年度 金融レポート


 実際に、米国と日本の家計金融資産の構成を見てみると、その違いは明らかです。日本では家計金融資産の51.7%を現金・預金が占め、株式等の運用資産の割合(間接保有を含む株式・投資信託投資割合)は18.6%に過ぎません。ところが、米国は現金・預金は13.7%しかなく、運用資産の割合が46.2%になります。約20年前と比べると、日本でも運用資産の割合は高まってきていますが、依然として日本は、金融資産の過半を現金・預金という「運用しない資産」が占めています。これは、iDeCoという運用収益非課税の制度であっても、その運用の中味の約65%を「元本確保型商品(預貯金と保険商品)」が占めるという現状にも表れています。

 このような日米の差を「国民性の違い」というのは間違いです。実際に、1985年くらいまでの米国の家計の金融資産に占める株式・投資信託の保有割合(年金保険等による間接保有分を除く)は15%程度で、現在の日本の保有割合と同じ程度でした。90年代になってから、米国で株式・投資信託の保有割合が急拡大し、現在に至っています。この米国の株式・投資信託への投資意欲を高めるきっかけになったのは、401(K)(確定拠出年金)やIRA(個人退職勘定)などの税制優遇がある個人年金口座の存在です。いずれも1970年代に法律ができ、1980年代に普及しました。米国で、株式・投資信託の保有比率が高まるのは、1985年以降のことですから、制度開始から10年以上が経過した後です。

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出所:平成28事務年度 金融レポート


 日本で確定拠出年金(DC)制度が創設されたのは2001年10月のことです。対象者である個人が掛け金を支払う「個人型」と、企業が掛金を支払う「企業型」の2通りがあり、当初は、企業型が中心に普及が図られました。2017年11月末時点で、企業型DC実施企業数は2万8,990社で、加入者数は約641万人になります。個人型は2017年1月に制度の大幅改定が実施されて加入対象者を拡大し、「iDeCo」という愛称も付けて普及策がとられるようになりました。2016年12月末時点で30.6万人の加入者数が、17年12月には74.5万人になりました。このiDeCoのスタートである2017年が米国の401(K)創設の1978年に相当するでしょうか? 

 米国で、株式・投資信託の保有比率が高まった1985年から2000年の頃は、米国で401(k)やIRAが始まって約10年が経過し、この間は株価が10年で3倍なるような緩やかな上昇を続け、90年以降は2000年のITバブルに向けて株価が急激に上昇する局面を迎えます。株式への関心の高まりは、株価の上昇が背景にないと難しいかもしれません。

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出所:モーニングスター作成


 もっとも、1990年代当時と現在では、社会的な環境は大きく変わっています。現在ではインターネットが日常に浸透し、海外の情報が手軽に入手できるようになりました。幸か不幸か、日本の株価の上下動は、日本の経済の変化よりも、海外の変化(米国の大統領選挙や英国のEU離脱、チャイナ・ショックなど)が起点になるケースが断然増えています。国内株式市場に興味を持ってニュースに接すれば、自ずと海外の主要地域におけるイベントの情報が入ってきます。また、国内ネット証券では外国株式を簡単に購入することができるようになりました。投資信託でも、海外に投資する投資信託は、インデックスファンドであれば信託報酬0.5%以下で選べるほどに品揃えが充実してきています。

 日本の個人金融資産の内訳については、日本の株式市場が米国のように大きな値上がりをするとは限らないため、より緩やかな変更となる可能性があります。資産運用の必要性に気が付いた人から、徐々に資金を「現金・預金」から、「株式」、または、「投資信託」に移していくという行動をとることになるでしょう。

 もはや、米国のITバブル当時のような株価の急速な値上がりを期待することは難しいかもしれません。ただ、経済発展や市場成長の可能性では、新興国の成長期待の大きさは注目されます。たとえば、「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」に連動する成果をめざすファンドは、中国、韓国、台湾、インド、ブラジルなど24カ国の国の株式に投資できます。「FTSE・エマージング・インデックス」に連動する新興国インデックスファンドは、韓国を除く中国、台湾、インド、南アフリカ、ブラジルなど21カ国に投資することができます。iDeCoの対象商品に「新興国株式」を取り入れている金融機関は少なくありません。新興国インデックスファンドは、信託報酬は年0.5%程度で投資できます。2017年には新興国株式(複数国、為替ヘッジなし)カテゴリーのファンドは年平均26.4%のトータルリターンになりました。

 株式に投資するファンドは、先進国(除く日本、為替ヘッジなし)カテゴリーでは、過去10年で年率平均5.27%、国内株式(TOPIX型)で同4.71%などの成績になっています。個別の株式への投資では当たり外れもあるでしょうが、数百の銘柄に分散して投資すれば株価の上下動が均されて経済成長率プラスαのリターンにつながってるようです。株式投資の魅力について、是非、客観的な目で比較検討をしていただきたいと思います。

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