資産管理コラム

iDeCoの商品選び、1年目の運用成績に見えた低コストファンドの限界

2018/01/18 14:08

 投資商品の運用コストは、「低い方が良い」とは一面の真実です。ただ、コストばかりにこだわっていては、思わぬことに足をすくわれます。今年から始まった「つみたてNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)」は、運用商品のコストまで国が規制していますが、iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)」は、商品選択の自由度が高い制度になっています。商品選択に幅があるiDeCoだからこそ、コストと商品選択について、しっかり考えてみましょう。商品の投資効果(パフォーマンス)とコストの関係を調べると、低コストの商品が「絶対に良い」とはいえない現実があります。

 iDeCoを利用するデメリットに口座の維持・管理手数料があります。NISAや一般の銀行口座などで、口座を持っているだけで手数料が取られることはありません。ところが、iDeCoは、国民年金基金連合会(毎月103円)、運営管理機関(同0円~450円)、信託銀行(同54円~65円)と、3つの機関から口座維持のための手数料が取られてしまうのです。加えて、運用商品に投資信託を選ぶと、その投資信託でも運用費用が発生します。口座管理手数料の支払いは決まっていますので、せめて、運用に関するコストは抑えたいと考えるのが人情でしょう。

元本確保型では対応不能な物価高(インフレ)

 では、運用に関するコストがゼロの「定期預金」を選択しますか? 定期預金金利は、ほぼゼロ%です。これでは、徐々に明らかになりつつある物価高に対応できません。

 白菜など葉物野菜の値段が高騰したことは一時的なことですが、ガソリン価格(レギュラー1リットル当たりが2016年1月=105.4円→2018年1月=134.0円)の値上がりは傾向的に続いています。また、今年1月からの小麦粉(家庭用で約1~4%値上げ)、3月からのビール(10%程度)、冷凍食品(3~16%など)、アイスクリーム(10%程度)等の値上げは恒常的なものです。数年前まではモノの値段は下がる傾向にありましたが、昨年、郵便ハガキが52円から62円に値上げされるなど、ここへきて値上がりが目立っています。しかも、値上がりする時には、数%~10%程度と比較的大きな率で上がっています。

 さらに、2019年10月からは消費増税が2%上がって10%になる予定です。預金の利息がゼロ%であれば、この増税分はお金の購買力の低下に直結します。消費税10%への引き上げは、当初15年10月実施の予定(野田政権で決定)でしたが、安倍政権下で17年4月に延期され、さらに、19年10月へと2度の延期が決定されました。これ以上の延期は社会保障等負担の関係から難しいといわれています。

 こうした物価高や消費増税などの現実を考えると、ゼロ%金利の預貯金など「元本確保型商品」で運用している限り、物価上昇(増税を考えると2%以上)に負ける運用成績しか期待できません。元本確保型商品に運用コストはかかりませんが、実質価値が目減りするデメリットは明らかです。

昨年1年間で「株式」は20%程度の値上がりを実現

 一方、投資信託を通じて投資可能な資産は、昨年1年間で大きく値上がりしました。もっとも身近な「国内株式」は、1年間で22.2%の値上がりをしました。「先進国株式」は18.4%、「新興国株式」は32.7%など、大幅な値上がりとなっています。「株式」については、「2017年は歴史的な1年間だった」といわれるほど、どの地域にとっても良い投資環境でした。「国内REIT」はマイナス成長でしたが、「コモディティ」、「海外債券」など、いずれも好調な成績になりました。

2017年の代表的な資産の年間リターン

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出所:モーニングスター作成

 これらのいずれの投資対象にもiDeCoを通じて投資が可能です。「コモディティ」を採用している運営管理機関は少ないですが、「国内株式」「先進国株式」などは、どの運営管理機関でも採用しています。また、多くの運営管理機関で「新興国株式」や「先進国REIT」の品揃えがあります。昨年、株式に投資する投信を、iDeCoの運用商品として選択していた方は、良い投資成果を残せたことでしょう。

 たとえば、DC専用ファンドの中で「国内株式」を投資対象とするファンドで最大の「DIAM国内株式インデックスF<DC年金>」(ベンチマーク=TOPIX)に毎月1万円を投資した場合の積立資金の推移は以下の通りです。1年間で12万円の投資元本の評価額は、12月末現在で13.76万円になりました。

「DIAM国内株式インデックスF<DC年金>」の積立投資結果

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出所:モーニングスター作成

低コスト・ファンドの限界を示す「インデックス」の縛り

 さて、DC専用ファンドの中で、運用コストだけに着目した低コストランキングを作ってみると、国内債券インデックスファンドが上位を独占します。次に現れるのが、国内株式インデックスファンドです。コストだけに注目して、国内債券ファンドを選んだ場合は、昨年1年間の運用成績に物足りないものを感じたことでしょう。

DC専用ファンドの低コストランキング(2017年12月末現在)

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出所:モーニングスター作成

 「国内債券」を除いた低コストランキングを作ると、「国内株式」、「外国債券」、「外国株式」のインデックスファンドが並びました。

「国内債券」を除いた低コストランキング(2017年12月末現在)

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出所:モーニングスター作成

 このランキング表のリターンの欄は明らかな傾向があります。国内株式を対象としたファンドは「22%」か「21%」、外国株式は「18%」、外国債券は「4.7%」になっています。国内株式の「22%」はTOPIX連動型、「21%」は日経225連動型です。外国株式は、概ね「MSCIコクサイ・インデックス」、外国債券は概ね「シティグループ世界国債インデックス」に連動する成績になっています。低コストのファンドは、インデックスに連動するファンドばかりですから、インデックスを超えるパフォーマンスは見込めません。

 もっとも、2017年は株価が上昇した1年でしたので、株式の運用成績が良かったのですが、反対に株価が下落する(たとえば、リーマンショックの2008年のような)年には、株式に投資するファンドは、まっさきに下落します。昨年の成績だけで全てを決めてしまうわけにはいきません。

1年で60%以上も値上がりしたアクティブファンド

 一方、トータルリターン(1年)のランキングは、トップの「SBI中小型割安成長株ファンド<DC年金>」が62.4%、2位の「MHAM日本成長株ファンド<DC年金>」が60.1%、「明治安田DC中小型株式オープン」の50.40%など、目覚ましい成果のファンドがあります。これらは、いずれも日本株式を投資対象としたファンドですが、インデックスに上回る成績をめざすアクティブファンドです。信託報酬は年率1.5%を超えます。インデックスファンドの信託報酬と比較すると、信託報酬の水準は数倍になりますが、信託報酬の差をはるかに超える高いリターンの前では、コストの違いは吹き飛んでしまうと思います。

トータルリターン(1年)ランキング(2017年12月末)

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出所:モーニングスター作成

 アクティブファンドのパフォーマンスは、1年だけの成績で評価することはできませんが、この3ファンドについては、過去3年を振り返ってもTOPIXを上回る成績をあげていることが確認できます。(「SBI中小型割安成長株ファンド<DC年金>」は、運用期間が短いため、同じマザーファンドに投資している「SBI中小型割安成長株ファンド」の成績を代用しています)

3ファンドの過去3年のパフォーマンス

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出所:モーニングスター作成

 アクティブファンドの評価は、難しいところがあります。一言に「アクティブ」といっても、「成長力」に着目した「グロース」型と、株価の割安度に着目して銘柄を選ぶ「バリュー」型では運用成績の出方が異なります。また、ベンチマークを意識しながらベンチマーク+αの成績をめざすファンドと、ベンチマークを意識せずに高いリターンをめざすファンドでは異なった運用成果になります。モーニングスターのサイトでは、個々のファンドについて、1年、3年、5年、10年など長期にわたって同一カテゴリーの平均と比較して成績が良かったか、悪かったかを一目でわかる比較情報を無料で提供しています。ファンドを選ぶ際の参考にしていただきたいと思います。

 まずは、「株式」に投資するファンドを選択し、投資の価格変動のブレにある程度の耐性ができたら、次にアクティブファンドを検討してみるなど、徐々に運用の幅を広げていきましょう。運用は長期に続くものです。また、運用商品の変更はいつでもできます。アクティブファンドは昨年のように思わぬ大きな成績に巡り合う幸運もありますが、その投資に踏み出すには、「投資について学ぼう」という意欲が大切です。

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