資産管理コラム

iDeCo改革1年、完全無料化など手数料引下げで加入者大幅増も資産運用面で再考必要

2017/12/29 18:26

 iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の大幅な制度改正から1年が経過した。2017年1月からは、従来は加入対象者ではなかった公務員や第3号被保険者なども加入できるようになり、ほぼ全ての国民が老後資金対策として利用できる税制優遇口座になった。この制度改正に合わせて申込受付を行う金融機関では、提供プランの大幅な見直しを行って新制度をアピールしたこともあって、iDeCo加入者は1年間で大幅に拡大した。

運営管理機関手数料の完全無料化が広がる

 iDeCoの制度改定に合わせ、プランの見直しとして進んだのは、全体的な加入手数料の低下だ。手数料は、制度運営を行うことで得ている運営管理機関手数料(口座管理手数料)と運用商品の信託報酬(運用期間中にかかる手数料)の両面から進んだ。

 運営管理機関手数料については、もっとも競争の激しいところでは、「無料キャンペーンから、完全無料化」が起きた。1月のスタート時には、「キャンペーン」で運営管理機関手数料を一定期間無料にするという取り組みが目立った。ところが、5月にSBI証券と楽天証券が「完全無料」を打ち出すと、7月にイオン銀行、9月にマネックス証券が「完全無料」で参戦。大和証券も9月から完全無料化した。

 また、みずほ銀行も毎月1万円以上の掛金で無料となる実質無料化を実施。毎月の掛金2万円以上、または、掛金1万円以上(かつ、残高100万円以上)で無料化になる損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントや、運用残高が150万円以上で無料になる第一生命保険など、条件付きで無料化というサービスもある。

大手銀行の月額255円が最低水準となり全体を引き下げ

 運営管理機関手数料は、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行/三菱UFJ信託銀行、ゆうちょ銀行が月額255円に設定して業界の最低水準ラインを形成している。この水準より低いのは、完全無料化のグループか、岡三証券(205円)しかない。この月額255円が一つの基準となって、その他の金融機関の手数料も255円を目指して低下し、運営管理機関手数料の中心は300円台前半になっている。

 制度改革が実施される前の運営管理機関手数料の水準は、月額360円程度だった。ここに国民年金基金連合会の103円と信託銀行の64円が加わって、月額合計530円(年額6360円)程度の手数料が当たり前だった。現実問題としては、運営管理機関手数料には、掛金と年金資産を管理するレコードキーパー(記録管理運営管理機関)の手数料200円程度が含まれているため、運営管理機関自体がサービスの対価として受け取っているのは、月額100円~150円程度だった。そして、毎月の掛金が全額所得控除の対象となり、勤労者であれば、少なくとも掛金の15%程度は税金が戻ってくる(毎月の掛金1万円の場合は1万8000円)ため、負担感はやわらぐと考えられていたようだ。

 しかし、各社がサービス内容を競い合うようになると、毎月継続的に必要となる手数料について負担感が大きいという見方が強まった。実際に、毎月1万円の掛金の場合、合計500円の手数料がかかれば、実際の買い付け額は9500円程度になってしまう。掛金の5%程度が手数料で差し引かれる計算になるため、運用益が出ない元本確保型商品(預貯金や保険商品)100%で運用している場合は、積立総額から5%分の手数料を差し引いた金額しか残らないことになってしまう。この状況を是正すべきだという動きが顕著になった。

 運営管理機関手数料を無料にした金融機関は、実質的にレコートキーパーに支払っている手数料を肩代わりしている(1件口座を増やすたびに月額200円程度の赤字)ことになる。そこまでして、普及に努めた結果が、2017年1月以来のiDeCo新規加入者の急増に表れている。

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※データの出所:国民年金基金連合会


運用商品の信託報酬の引き下げは「第二幕」か?

 運用商品の手数料である信託報酬は、17年1月以降にスタートする新プランに移行する中で、手数料率の引き下げが実施された。もともと「DC専用ファンド」として設定・運用されている投資信託は、一般の銀行・証券の窓口で販売されている公募投資信託と比べると、手数料水準は低く設定されていた。近年では、公募投資信託の中でもインデックス投信を中心に信託報酬の引下げ競争が始まっているため、新プランに採用された投信の信託報酬は、旧プランの採用投信の手数料率より、一段と低い水準になった。

 ただ、公募インデックス投信の信託報酬の引き下げ競争は、18年1月にスタートする「つみたてNISA」を控えて、一段と競争が激化している。すでに、DC専用ファンドよりも低い水準の手数料率の公募投信が現れている。例えば、DC専用ファンドで「日経平均株価」に連動するインデックス投信の信託報酬率(税込)は現在0.21%~0.65%だが、公募投信では0.18%~0.19%というファンド群がある。現在の運用商品ラインナップで、信託報酬が比較的高い水準にある場合、銘柄の入れ替え(追加)があってもおかしくない。iDeCoで提供する商品数については、35銘柄が上限に定められているが、その枠内においても運営管理機関の品揃えにはほとんどの金融機関で追加が可能だ。運用商品の見直しが進む可能性がある。

資産運用の中味には再考が必要

 最後に、iDeCoの運用の状況を見てみたい。公式なデータが、運営管理機関協議会がまとめている2017年3月末現在のデータ(図表2)しかないが、この運用商品の配分比率は、2016年3月末、2015年3月末と比較してもほとんど変化がない。日本国民の運用の考え方を示した典型的なパターンなのかもしれない。

 特徴的なのは、「預貯金」(38.56%)と「保険」(25.97%)という元本確保型商品での運用が約65%を占めることだ。2017年に年間で20%以上も値上がりした「国内株式」は10.89%に過ぎない。意外と運用商品の本命と目されている「バランス」(9.39%)で運用している比率が低いことも目立つ。

 元本確保型商品100%で運用している人は、運用収益はゼロ%なので、運営管理機関手数料分だけマイナスの積立を行っていることになる。「あえて、投資リスクをとらないで、確実に計算ができる所得税控除のメリットだけを取りに行く」と割り切っている人は良いのだが、単純に「投信のことは、良くわからないから」という理由で元本確保型の商品のみで運用している人については、長期の資産形成について考える機会を設けるような何等かの働きかけがあった方が良いかもしれない。

 現在、法的には「兼業規制」があって、iDeCoに加入した人へのアドバイスは、確定拠出年金業務に特化した専担部署の担当者しか行うことができない。そのため、多くの金融機関では、加入者からの問い合わせにコールセンターで答える受け身のアドバイスしか実施していない。その結果、「iDeCoで400万円積み立てたはずなのに、実際には380万円にしかならなかった(投資元本の95%相当)」と不満を持つ人が数多く出てしまうと、iDeCoという制度の浸透が進まないということになりかねない。

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※データ出所:運営管理機関連絡協議会

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