資産管理コラム

人生100年時代を意識した生活設計、iDeCoとNISAは組合わせて積み立てるべし

2017/10/13 19:51

 「高齢者の定義を75歳以上に引き上げるべきだ」という議論が耳目を集めたのは今年1月のこと。日本老年学会・日本老年医学会が、高齢者の心身が若返っていることを背景に、65歳~74歳を「准高齢者」と呼んで、社会の支え手として捉え直すべきだと提言したのでした。厚生労働大臣は慎重な姿勢を示したものの、「年金不安」が広がっている現在、「高齢者は75歳以上」のニュースは「年金の支給開始が75歳」というイメージにつながりました。人生100年と考えれば、75歳から年金生活になっても余生は25年に及びます。60歳以降の働き方を考えるとともに、人生100年を見据えた資産形成もしっかり取り組んでいきたいところです。収益非課税のiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)やNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)をしっかり活用することを考えましょう。

50年後の日本は高齢者1人を1.3人が支える危機的状況

 日本老年学会・日本老年医学会の提言によると、「近年の高齢者の心身の健康に関する種々のデータを検討した結果、現在の高齢者においては10~20年前と比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が5~10年遅延しており、『若返り』現象がみられる」といいます。現在の高齢者の身体的な機能が5~10年若返りしているから、その分を踏まえて、「65歳以上」を「高齢者」としている定義を10年間先送りして「75歳以上」としてもよいのではないかということです。

 内閣府の「高齢社会対策の基本的在り方等に関する検討会」は、10月2日に出した報告書の中で、「年金受給を70歳まで繰下げることにより最大で42%増の額を受け取ることができる現行制度の利用率が低いという現状がある。就業促進の観点からも十分な周知が望まれる。また、高齢期にも高い就業意欲が見られる現況を踏まえれば、繰下げを70歳以降も可能とするなど、より使いやすい制度とするための検討を行ってはどうか」という提言を加えています。報告書にあるのは、年金受給の自主的な「繰下げ」に関することですが、この議論が「公的年金の支給開始年齢」の制度的な繰り下げに結びつくことは、容易に想像できます。

現役世代を75歳まで延長すれば、2.5人で1人を支える構造に

 65歳以上の高齢者を、15~64歳の現役世代が支えると考えると、現在(2016年)は2.2人で1人の高齢者を支えている計算になります。今後、一段と高齢者比率が高まる見通しであることから、約50年後の2065年には、高齢者1人を1.3人で支える時代になる見通しです。高度成長期の1965年には10.8人で1人を支えるという比率だったことを考えると、支え手は1人あたり10倍の負担がかかることになります。現役層が高齢層を支えるという日本の社会保障制度そのものが崩壊する恐れもでてきます。

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 このため、少子化対策に政府が前のめりになり、消費増税の使い道を子育て対策にあてるなどの選挙公約が出てくる背景になっています。少子化に歯止めをかけることは、「団塊ジュニア世代の女性が妊娠の限界年齢を迎えつつある現在の喫緊の課題」とされています。女性の就労支援、男性の子育て参加促進など、様々な働き方改革が議論されているゆえんです。

 一方、公的年金の支給開始年齢を遅らせ、現役で働く期間を延長すれば、高齢者と支え手の比率が変わってきます。現役世代を70歳まで延長すれば、2065年予想の人口比率で、1.8人が1人を支える構造になります。さらに、75歳まで支給開始を遅らせると2.5人で1人を支えることにもなるのです。高齢者に働きやすい環境を用意してできるだけ長期に働いてもらうという対策と並行するようにして、公的年金の受給開始年齢の繰り下げも避けては通れないことになるでしょう。

65歳からの平均余命が20年間におよぶ現実

 2016年の日本人の平均寿命が男性80.98歳、女性87.14歳で過去最高を更新しました。1986年に「高年齢者雇用安定法」で60歳定年を努力義務化した頃、男性の平均寿命は75歳くらいでした。60歳で仕事を辞め、15年くらいの余生を送るという人生です。60歳になれば公的年金の支給も始まっていました。その後、平均寿命は延び続け、人口に占める高齢者比率が上昇し、公的年金の支給時期は65歳まで繰上げられました。2016年現在の65歳男性の平均余命は19.55年、女性は24.38年です。公的年金の受給が始まってから平均で20年間の余生があります。

 1986年当時と同様に「年金をもらい始めてから余生が15年」と考えれば、現在の70歳男性の平均余命15.72年が相当します。年金の支給開始年齢が70歳になれば、当然、70歳まで働き続けることが必要になります。現在、各企業においては、昨年10月に創設された「65歳超雇用推進助成金」などのバックアップもあって、65歳以上への定年の引き上げ、65歳を超えても継続雇用する制度の導入などの検討や実施が進んでいます。60歳を超えると体力や気力の面で40代の頃のようには働けません。また、家庭の状況によっては、親の介護などによってフルタイムで働けない場合もあります。そのような個人の事情に配慮した柔軟な就業体制の整備も必須になるでしょう。

 「60歳定年」が当たり前の時代に働いていた人にとって、「70歳定年」などということは、憂鬱になるだけの議論でしょう。しかし、少子高齢化の日本において、日本の活力を維持することを考えると、避けて通れないことといえます。私たち一人ひとりが、70歳まで働くことのイメージを持ち、それへの備えをしていく必要があります。現在でも65歳~74歳の約半数が収入のある仕事を持っています。この現実が、より一般的になっていくのでしょう。

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iDeCoとNISAの活用で60歳リタイヤも可能に

 この「備え」のために、若い頃からの資産形成の習慣化、普及が求められています。今年1月からiDeCoの加入対象者が大幅に拡大したこと、また、来年1月から「つみたてNISA」がスタートするなど、「積み立て」をベースにした税制優遇の制度が相次いでいるのは、政府として「積み立て」が、「資産形成」が国民にとって重要だというメッセージです。

 たとえば、60歳以降(子育てを終え、住宅ローン等を完済したと仮定)の生活費を月額20万円とすれば、1年間で必要な金額は240万円。10年分で2400万円の貯蓄があれば、公的年金の受給開始が70歳になっても、年金受給まで食べていくことは可能です。一般に公的年金の受給金額だけでは生活をしてくことが厳しいといわれますので、年金生活の補完として必要な金額を1080万円(70歳からの余生を15年と考え、年金の補完として毎月6万円を取り崩す計算)と仮に置くと、60歳までに3500万円程度の貯蓄があれば、60歳で完全リタイヤするということも可能になります。

 60歳までに3500万円をつくろうと考えた場合、30歳で30年間の期間があると、毎月4万円を年5%利回りのある資産で複利運用すると3245万円になります。35年間の運用にすると4453万円です。これは、収益非課税、かつ、販売手数料無料で計算した結果です。収益への20%課税があると、30年間で2743万円、35年でも3600万円です。収益非課税、かつ、販売手数料無料のiDeCo、あるいは、つみたてNISAが、いかに有効かが分かっていただけると思います。

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 しかも、両方を組み合わせることによって毎月の積立可能額は、収益非課税のメリットを4万円以上は確保できます。つみたてNISAは年間40万円が限度額なので毎月3.3万円。ここにiDeCoの限度額(企業年金のない会社員は月額2.3万円、公務員は月額1.2万円など)が上乗せできるからです。この配分比率を、どのように設定するのかは考え方次第です。長い人生、何が起こるか分からない、いつでも自由に使えるお金をできるだけ手厚く確保したい場合は、NISAを厚めに考えましょう。究極の資産形成の目的は老後生活にありとお考えの場合はiDeCoを厚めにしましょう。iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となるため、所得税・住民税の戻りがあるというメリットもあります。

 いつでも引き出して使えるNISAと、60歳までは引き出せないiDeCoを上手に組み合わせて、最適な資産形成プランを立案するようにしましょう。