資産管理コラム

ドルコスト平均法の現実、資産形成と投信をつなぐ「長期・分散・積立」投資

2017/09/13 14:36

 「毎月すこしずつお金を積み立てて財産をつくろう!」――これが、政府から発せられている強烈なメッセージです。今年1月から加入対象者が大幅に拡大したiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)も、来年1月にスタートする「つみたてNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)」も、資産形成の過程で徴収している税金を免除してまで、国民に有利な制度として定着をめざしています。資産形成のポイントは、「長期・分散・積立」の効果です。その3本柱のひとつ「積立」の効果は、「ドルコスト平均法」ともいいます。「ドルコスト平均法」の効果から、つみたて投資にふさわしい商品の特性について考えてみましょう。

 政府主導の資産形成支援策としては、昭和時代に「マル優(少額貯蓄非課税制度)」という制度があって、貯蓄振興がはかられました。「マル優」では預貯金や国債が対象になっていたのですが、iDeCoやNISAで優遇対象になるのは、「投資」(主として投資信託)です。なぜなら、預貯金の金利はゼロ%なので、そこでは収益が見込めないからです。しかし、「マル優」を国民がこぞって利用したのは、預貯金や国債など元本がしっかりしている商品が対象だったからでしょう。iDeCoやNISAは「投資信託」が中心になる制度で、利用がそれほど広がっていません(NISAは保有1000万口座を超えていますが、大半が利用されていない休眠口座です)。

資産形成と「元本保証のない投信」をつなぐ長期・積立・分散

 預貯金と投資信託の差は明らかです。投資信託は「元本保証がない」、「損をするかもしれない」のです。「資産形成」と言いながら、その手段として元本保証のない投資信託を薦めるのは、なんだか矛盾があるように感じられます。「資産をつくりましょう」と「損をするかもしれない」が同居しているからです。

 この矛盾を解消するために、「長期・分散・積立」の効果は役に立ちます。iDeCoは60歳まで定期的に掛金を積み立てる制度ですし、「つみたてNISA」は20年間の積立が収益非課税で行えます。この両制度ともに投資信託という「分散投資商品」を利用することが前提になっています。

 なぜ、「長期・分散・積立」が、元本保証のない商品と資産形成をつなぐカギになるのでしょう? たとえば、「ドルコスト平均法」は、「値動きのある金融商品の購入にあたって、定期的に、一定の金額(定額)で投資を継続することで、平均購入コスト(費用)を低減させる投資方法」と解説されます。ポイントは、「定期的」と「定額」です。「定期的」というのは、購入のタイミングを気にしないこと。「定額」によって、価格が安い時には量を多く購入することによって、平均取得単価を引き下げることができます。(価格が安定的に上がり続ける資産を定額積立投資すると平均取得価格は引き上がってマイナス効果に働きます)

ドルコスト平均法では下げが大きいほど大量に購入できる

$costkouka.jpg たとえば、右表にあるような価格変動をする投資信託を、毎回1万円ずつ10回にわたって購入したとします。1万円での購入可能口数をみると、価格が安い時には多く、価格が高くなると口数が少なくなることがわかります。合計の購入口数は、11.067万口となり、平均取得単価は0.90円になりました。価格が安い時に、多く買う「ドルコスト平均法」の効果は、この平均取得価格の低下効果にあります。

 そして、より値動きが大きい方が、より大きな取得価格低下効果が得られます。価格が下落するほど、より多くの量を購入しますから、価格下落傾向が強い方が、より大きな平均取得価格の低下効果が得られます。下段は、より大きな価格変動が起こって、価格が下落した場合の事例です。平均取得価格は0.82円まで低下しました。価格が変動し、しかも価格が下落するからこそ、「ドルコスト平均法」による取得価格低減効果は発揮されます。毎回の購入価格に変化がない預貯金では「ドルコスト平均法」は活きないのです。預貯金では1円は1円であって、口数が増えても1円の取得価格に変化はありません。

 もっとも、これは「平均取得価格」の変化に過ぎません。先の例の上段の最終評価価格(時価×口数)は11万670円で利益が出ていますが、下段では9万7,040円で元本を割れています。「ドルコスト平均法」は、購入のタイミングを気にせずにスタートでき、価格変動商品の平均取得コストを低減させる効果は期待できますが、その効果は、「平均取得単価を低減させる」ということにとどまります。最終的な投資の成果は、投資した資産の成長によります。

 ドルコスト平均法で定期・定額の積立投資を行っている間は、購入開始時よりも価格が下落しても問題ありません。かえって価格が下落する方が安い値段で大量に購入できるため、価格下落は歓迎できることでもあります。ただ、最終的には積立購入期間で付けた安値よりも、価格が値上がりしなければ投資収益は生まれません。どの程度価格が戻れば収益化できるかは、平均取得コストの水準に左右されますので一言では言えません。大きな価格下落を経験した場合は、投資開始時点の価格に戻ることがなくても、投資収益を上げることができます。

投資対象は世界の市場に幅広く分散投資

 投資する対象資産には、株式や債券、不動産など様々な資産があり、それらの価格がどう動くかということを予測することは誰にもできません。ただ、世界の人口は増大し、世界経済は緩やかに拡大しています。世界の一部では戦争もありますが、世界中で貧困の克服へ向けた努力が重ねられ、貧しい国や地域が徐々に豊かになっています。世界経済全体が成長しているのですから、世界の市場に幅広く分散投資すれば、世界経済の成長に見合った資産成長が期待できるでしょう。IMF(国際通貨基金)によると世界経済は2020年に向けて年率3%台後半の成長を継続すると予測されています。

 「日本の株式」「米国のREIT(不動産投信)」など一部の資産に集中投資するのではなく、世界中の株式や債券、REITなどに幅広く分散投資することが重要です。投資信託は、分散投資を実行する道具としては非常に使いやすくできています。iDeCoでは、1%単位で投資先を指定することもできます。また、1つのファンドで、世界中の株式・債券・不動産・資源等に分散投資する商品もあります。「投資はこわい」のは当たり前ですが、「積立投資では価格が下がることがメリットになる」のです。まずは少額から、「分散・積立」の効果を試してみませんか?