資産管理コラム

iDeCoの運用商品、「元本確保型」と「価格変動商品」はどっちを選べばいいの?

2017/08/23 17:43

 iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の運用商品には、「元本確保型商品」と「価格変動商品」があります。お金を貯えるためにどちらを選びますか?――と聞かれたら、多くの人が「元本確保型商品」を選ぶのではないでしょうか。老後のために毎月お金を積み立てていくのですから、積み立てたお金の「元本」が確保されることは最低条件と感じるのが普通の感覚だと思います。しかし、iDeCoで「元本確保型商品」だけで運用していたら、結果的に元本割れになったということになりかねません。マイナス金利の今だからというのではなく、日本経済が「Japan as No.1」と賞賛された1980年代から現在までの「20年間積立」を検証した結果です。現実をみると、「元本を確保するために、価格変動商品を使う」ことが必要になっています。

「元本確保型商品」での運用でも元本割れになる現実

 「元本確保型商品」なのに結果的に元本割れになるというのは、インフレ(物価上昇)による現金の実質的な価値の目減りを預貯金の利息では補いきれない場合があるからです。消費者物価指数(前年比)と預貯金金利の推移は以下のグラフの通りです。1980年代は概ね物価上昇率を上回る金利が付いていましたが、失われた20年といわれる1991年~2010年頃には預貯金金利をインフレ率が上回るようになり、2011年以降の預貯金金利は0.0%台にはり付いてしまっています。


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 上記のグラフでは、「消費増税」がインフレ率を大きく引き上げていることも目につきます。1989年4月に導入された消費税は、当初の3%から、5%(97年4月)、8%(2014年4月)になり、2019年10月には10%に引き上げられることが予定されています。その後も、増大する社会保障費用を賄うために、欧州の先進国並みに消費税率15%~25%への再引き上げも一部で議論されているといいます。現在の超低金利時代が簡単には解消しないと言われている中にあっては、預貯金を使った運用でインフレ率を上回りつづけることは、きわめて難しいと考えられます。

iDeCoで発揮される「ドルコスト平均法」の効果

 iDeCoを使った長期運用のイメージをつかむため、確定拠出年金制度の運営について議論した社会保障審議会で提出された資料を参照してみます。下記の表は、「確定拠出年金の運用に関する専門委員会」で委員を務めた臼杵政治氏(名古屋市立大学大学院経済学研究科教授)が提出した資料の一部です。「等金額ドルコスト平均法の効果」とは、同じ金額を定期的に投資していくことによって得られる投資効果のことです。同じ金額を投資するため、価格変動のある商品が安い時には多くの量を購入することが可能で、価格が値上がりしている時には少ない量を購入することによって平均買いコストを低く抑える効果があります。下記の資料では、3カ月に1度、20年間で計80回の拠出をした場合の20年後の累積積立額を調べています。20年後の積立額が80未満の場合は元本割れになるところ、定期預金100%(表の右端の列)の場合は、2017年3月末まで208回の結果のうち、36回で実質価値が元本割れという結果でした。


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 この検証期間は、第1回投資日を1980年1月初~1997年4月初までに設定していますので、金利とインフレ率の関係は最初のグラフにある通りです。80年代初めには年率6%台だった預貯金金利は、20年間の間に1%以下(0%台)にまで低下しました。

元本を確保するために「価格変動商品(投資信託)」の活用

 一方、検証結果によると「グローバル株式100%」での運用成績がもっとも良かったことになっています。元本80のところ、平均で146.1で、元本割れは208回中2回しかありませんでした。反対に、もっとも成績が悪かったのは「日本株式100%」のケースで、平均が78.7ですから、平均が元本割れになっています。

 そして、元本割れがゼロだったケースは、「グローバル株式30%、国内債券30%、定期預金40%」「グローバル株式50%、国内債券50%」「グローバル株式40%、国内債券30%、為替ヘッジ付外債30%」といった分散投資をした場合でした。この3つの組み合わせで、平均が一番高かったのは「グローバル株式50%、国内債券50%」の組み合わせです。この結果をみると、実質的な元本割れを回避するためには、「元本確保型100%」の運用では難しく、「グローバル株式」などの価格変動商品を組み合わせることを考えたいということになります。

 この検証結果で使われた「グローバル株式」とは、「日本株を含むMSCIWorldの円建てリターン」です。一般に外国株式に投資するインデックスファンドは、「MSCI-KOKUSAI指数」という日本株を除くグローバル株式指数に連動することをめざします。検証で使われた「グローバル株式100%」に近づけるのは、「外国株式インデックスファンド」92%に「日本株式ファンド(TOPIX連動型など)」を8%程度組み合わせたイメージです。あるいは、元本割れがゼロだったケースの「グローバル株式30%、国内債券30%、定期預金40%」は、バランス型ファンドで株式の組み入れ比率が30%のものなども投資対象として検討できます。

ドルコスト平均法の効果は一定の価格変動があってこそ発揮

 さらに、iDeCoの運用で期待できる「ドルコスト平均法の効果」は、一定の価格変動がある方が高い効果が得られるものです。たとえば、代表的な「外国株式インデックスファンド」の過去10年間の積立投資効果を調べると、以下のグラフになります。ファンドは、MSCI-KOKUSAI指数に連動する運用をめざすインデックスファンドです。過去10年は、ブルーのグラフ(一括投資)で表されているように、前半が下落局面で後半が上昇局面という理想的な動きになりました。毎月の積立投資(グリーンの線)では、価格が下落する場面で、元本を一時的に割り込んでいるものの、この間により多くの量を購入していることになります。その結果として、後半に価格が上昇する際には、インデックスの上昇率(ブルーの線)を上回る上昇率で資産価値が増えています。


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 同じ10年間で、価格変動率が小さかった国内債券ファンドの累積投資結果を比較して見ると、ドルコスト平均法の効果の差が分かります。「国内債券インデックスファンド」は過去10年間は、緩やかな右肩上がりでした。このインデックスの値上がりは積立投資の結果に反映されてはいますが、外国株式インデックスの投資効果と比較すると限定的な効果しかありません。

 このようなドルコスト平均法の効果をパワフルに引き出すためにも、iDeCoでの商品選びは、中長期に資産成長が期待できるグローバル株式を一定水準組み入れた投信を中心に考えたいところです。ドルコスト平均法を使っても、投資する資産が下落し続けていてはプラスの成績はあげられません。世界の経済が緩やかに拡大すると考えられる現在、「グローバル株式」への投資を軸に、iDeCoの運用商品を選んでみましょう。


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