資産管理コラム

所得控除制度を使って上手に節税、今年のトレンドは「iDeCo」と「セルフメディケーション」

2017/07/25 10:40

 2017年(平成29年)の新たな節税法として注目されるワードは、「iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)」と「セルフメディケーション」といわれます。いずれも社会保障関係費に含まれる分野の税制優遇策を活用した節税策です。年金や医療、福祉などの社会保障給付費は、急速に進んだ高齢化によって過去10年間に年率2%台後半の伸び率で拡大しました。この間、日本のGDP(国内総生産)成長率が年率1%に満たないので、このままの勢いで社会保障給付が伸びると将来は社会保障制度を維持することが難しくなってくることは明らかです。世界経済の成長率の鈍化によってGDP成長率の拡大が期待薄であることから、国は社会保障給付の伸びの抑制策を様々に模索しています。そのカギが国民の「自助努力」です。今年度に拡大した税制優遇は、まさに社会保障給付の伸び率を抑える政策の現れといえるでしょう。


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出所:モーニングスター作成

税制優遇が手厚いiDeCoは「年金」拡充の重要なツール

 「iDeCo」の加入対象者を公務員や専業主婦(夫)も含めて全国民にまで拡大したのは、公的年金を補完する自助努力の上乗せ年金の手段に資するためといえます。iDeCoに加入すると、その掛金は全額所得控除の対象になります。たとえば、課税所得が330万円を超える人(所得税率20%)が、月額1.2万円でiDeCoに加入した場合、4.32万円の節税効果が期待できます。年間総額14.4万円を積み立てることができるばかりでなく、支払うはずだった4.32万円の税金が戻ってくるのです。

 しかも、iDeCoの運用益は非課税です。いいことずくめのiDeCoですが、そのココロは、社会保障給付の大きな負担が公的年金の支給にあるためということもできるでしょう。


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医療費抑制に「セルフメディケーション」という新制度

 「セルフメディケーション(医療費控除の特例)」は、厚労省の説明によると「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、平成29年1月1日以降に、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるもの」とされています。

 所得控除の対象となる医薬品がスイッチOTCに限られるため、購入医薬品を選ぶ必要がありますが、年間で購入した医薬品の費用のうち1.2万円を超えた部分(上限は8.8万円)が所得控除の対象になります。最大8.8万円分(年間の購入費が10万円以上)の場合、所得税率20%の場合は2.64万円が戻ってくる計算です。この税制優遇は、健康の維持増進及び疾病の予防への取り組みを目的に実施されています。医療費の伸びの抑制を狙った施策です。

iDeCoの節税効果は、早く始めた方がお得

 所得控除には、いろいろな種類があります。一律に適用される「基礎控除」は38万円。「配偶者控除」「扶養控除」など家計を同じくする親族の有無が要件になっているもの。「社会保険料控除」は健康保険や国民年金、厚生年金等の保険料などの負担に応じて控除されるので、ほとんどの国民が対象となります。加えて、個人の自助努力などに対する控除が、「生命保険料控除」「地震保険料控除」「医療費控除」「寄付金控除」などがあります。

 「iDeCoの掛金」は「社会保険料控除」のひとつ、「セルフメディケーション」は「医療費控除」の枠を使います。「ふるさと納税」は「寄付金控除」の枠組みになります。所得控除は、所得税の課税対象となる所得の額から控除金額が差し引かれ、所得税が少なくなるので、法令で認められている所得控除の制度は、使っただけお得といえます。

 ただ、所得控除を「控除のためだけ」に利用すると非効率、または、無駄遣いになる場合もあります。たとえば、「生命保険料控除」は、新生命保険料控除(最高4万円)、介護医療保険料控除(同4万円)、新個人年金保険料控除(同4万円)を合わせて適用限度額が12万円になりますが、これを限度額いっぱいまで控除を受けようとして、生命保険も介護保険も個人年金も、それぞれに年間の支払保険料を8万円以上(合計24万円以上)で契約するようなことです。控除のための保険料から保険に加入するのではなく、合理的に必要な保険金額を考え、それに必要な保険料を負担するということが基本です。

 また、ひとつの考え方ですが、「生命保険料控除」や「医療費控除」「寄付金控除」などは、「使ってしまったもの」に対する控除で、使ってしまったものは元には戻りません。ところが、「iDeCoの掛金」は、60歳までは引き出せないという条件付ではありますが、後には手元に戻ってくるお金です。決して使ってしまうものではなく、使う時期を先送りしているだけなのです。それでも所得控除の対象になっているので、もっともお得な所得控除制度ではないでしょうか? iDeCoの掛金は、全額が所得控除の対象です。毎月1万円の掛金の場合は、年間12万円。8月からスタートした場合は、今年分が5カ月分、9月からスタートでは4カ月分になります。早く始めた方が、お得が増すのも特徴です。