資産管理コラム

iDeCoの投資で知っておきたいアメリカの金融政策

2017/07/10 15:55

 iDeCoでは長期分散投資が必須となります。というのも、私たちが投資する世界の株式、債券は世界の経済の中で日々動いているからです。株式や債券の動きを予想するのはとても難しいことで、プロでも思った通りに行きません。ですので、リスクの分散のためにもさまざまな国、様々な資産に分散して投資をすることが重要となります。

 しかしながら、少しでも世界の動きを知っているのと知らないとでは、私たちが投資へ向かう姿勢は全く違ってきます。そもそも、世界の経済はアメリカを中心に動きます。アメリカの金融政策、株価、金利動向などから欧州、新興国、日本など世界各国の金融市場に作用していくのです。今回は今アメリカではどのような金融政策がなされているのか、iDeCoで投資をする際に頭の片隅に入れておいて頂きたい内容をまとめました。

金融緩和、金融引き締めとは何?

 アメリカでは現在、利上げによる金融引き締め政策を行っています。今までは、リーマンショック後に経済を立て直すため、金融緩和政策を行っていました。政策金利の引き下げにより、金利が下がると、金融機関は、低い金利で資金を調達できるので、企業や個人への貸出においても、金利を引き下げます。そのことから企業の運転資金の調達が容易になることで投資活動が活発になったり、個人では住宅ローン金利が低下することから住宅購入のニーズが増えたりと景気を浮揚する効果があります。

 また、金融緩和では政府が市場に流通している国債を大量に買い入れることで、金融機関に資金が流れます。その資金で各国の株式や債券を購入するため、株価は上昇し、新興国には資金が流れることで経済支援になるなどの効果があります。現在はその出口戦略で、金融緩和の逆の動きとなります。金利を引き上げることで長期金利は上昇し、さらに今後、政府が買い取った国債を減らしていく政策を実行していきます。現在世界の各国では、欧州や日本をはじめ多くの国で金融緩和政策を行っており、アメリカがいち早く出口戦略に着手しています。

アメリカでは3回連続の利上げが決定

 FRB(米連邦準備制度理事会)は6月13~14日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)において、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド金利)の誘導目標を8対1の賛成多数で0.25ポイント引き上げ、1.00%~1.25%とすることを決定しました。今回発表された「経済見通し」では、2017年の実質GDP成長率(中央値)が2.2%と前回(3月)から+0.1%上方修正される一方、失業率は2017年10~12月期平均で4.3%と前回の4.5%から引き下げられており、経済自体は楽観的な見通しとなっています。2017年年末時点の政策金利の目標は1.25~1.50%と前回から変更はなく、年内はあと1回の利上げを見込んでいます。FRBはFF金利の長期的な目標を3.0%とし、2019年までには毎年3回程度の利上げを予想しています。


米国の利上げ予想と長期金利の推移


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※予想値は、米・連邦公開市場委員会によって設定された範囲予測の中央値

今後はバランスシート縮小に焦点

 今回のFOMCではこれまでの利上げとは異なり、初めて出口戦略(量的金融緩和からの脱却を目指す戦略)を一段と進めるため、保有債券の減額に着手すると宣言しました。具体的にはリーマンショック以降から買い取りを始めた国債やMBS(住宅ローン担保証券)の保有規模を2017年後半から徐々に減らし、FRBのバランスシート(保有資産)を正常な水準に戻すとしています。市場では9月にも縮小が開始されるのではないかとも言われています。具体的には、満期を迎えた債券のうち一部は再投資を行わず、再投資停止の上限(国債は月額60ドル、MBSは月額40ドル)を設けて、上限を上回る部分だけを再投資するとしています。上限は3ヶ月毎に引き上げる方針が示されました。しかしながら、具体的にどの水準まで縮小を行うかについては明示されておらず、今後の注目点となります。

マーケットへの影響は?

 今後のFOMCの見通し自体は既に織り込まれており、利上げ発表によるマーケットの反応も限定的であると予想されます。しかしながら、声明文で「株価が割高」という文言が盛り込まれる可能性には留意が必要です。3月の議事録で登場し、5月に株価がやや伸び悩んだことから削除されましたが、今後また復活することも考えられ、そうなるとFRBによる「株価へのけん制発言」が出ることも考えられます。FRBではこういった株価への発言も出てくるのです。

 また、足元ではインフレの鈍化が続いており、今後も同様に続けば今後の利上げ見通しを引き下げる可能性や、出口戦略の見通しの変更など、少なからずマーケットに影響を与えることが考えられます。バランスシートの縮小は一般的には国債の買い入れが減少するため、長期金利の上昇要因となり、為替相場では、日本の金利との差が広がればドル高円安が進みます。株式市場では、これまで、バランスシートの拡大により上昇してきたため、逆の動きとなる事でマイナスとなる事も考えられます。しかしながら、トランプ大統領の財政政策が支えることも想定され、今後の株価の動向には注視していく必要がありそうです。確定拠出年金では引き続き分散投資をし、予期せぬ動きにも対処できるよう、定期的にポートフォリオの見直しやリバランス(配分変更)をしていきましょう。