資産管理コラム

iDeCo運営管理機関手数料は「無料」が当たり前に!? =iDeCo手数料の現在値

2017/06/09 16:49

 SBI証券が5月18日にiDeCoの運営管理機関手数料の完全自由化を発表すると、その日のうちに楽天証券も完全自由化を発表しました。これで、従来から加入者に関して無料化を実施していたスルガ銀行と合わせて、3社の手数料が無料になりました。みずほ銀行が5月から導入した新手数料体系も、掛金が月額1万円以上で無料ですから、実質的に無料といえる措置です。従来は、「iDeCoには掛金が全額控除になる特典があるため、年間で5,000円~6,000円程度の手数料を支払っても十分に加入メリットがある」といわれていたものが、あっという間に「運営管理機関手数料=無料」がひとつの流れになってきました。

iDeCoの手数料は2つ、「口座管理手数料」と「運用商品手数料」

 iDeCoに加入すると2つの面で手数料を支払うことになります。ひとつは、口座を維持するために毎月定額でかかる手数料です。この内訳は3つに分かれます。(1)iDeCoのサービス主体である国民年金基金連合会が徴収する月額103円(税込)、(2)国民年金基金連合会から委託を受けて個人別資産を管理する信託銀行に支払う事務委託先金融機関手数料=概ね月額64円(54円~65円)、(3)運営管理機関手数料(運用商品の選定や制度内容の案内などをする運営管理機関の手数料と、記録関連運営管理機関<略称:RK>手数料の合計)で、月額無料の動きが広がっているのはここです。


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 たとえば(3)の運営管理機関手数料が月額313円だった場合、毎月の手数料は(1)と(2)を合わせて合計で480円になります。毎月の掛金が1万円だった場合、毎月の口座管理手数料は掛金に対して4.8%です。掛金が5,000円の場合は9.6%に相当します。iDeCoは販売手数料がかからないものの、一般の販売手数料よりも大きな手数料がかかってしまいます。まして、定期預金など通常は購入に手数料がかからない商品でも同様に手数料がとられるのですから、かえって資産形成には不利な制度ではないかと感じられるでしょう。

 このため、iDeCoのメリットを最大限に提供しようとするのが「運営管理機関手数料の無料化」の取り組みです。(1)と(2)だけなら、口座管理手数料は掛金1万円に対して167円(掛金比1.67%)です。実は、運営管理機関手数料を無料にすると、記録管理のために1人当たり月額200円程度のRK手数料が必要なので、窓口となる銀行や証券会社などの運営管理機関がRK手数料を負担しなければなりません。加入者1人に対して年間2400円以上のコストを金融機関側が負担するのですから、「iDecoの運営管理機関手数料無料」には簡単には踏み切れるものではないと推察します。

 もっとも、課税所得が250万円の人は、所得控除によって掛金の20%に相当する税金(所得税と住民税の合計)が戻ってきますので、たとえ掛金に対して4.8%の手数料を支払ったとしても、節税で得るメリットは十分に大きいということもできます。この所得控除のメリットが大きいために、今年1月までは口座管理手数料が合計で毎月600円を超えるところもありました。「20%戻ってくるのだから、6%程度の負担は重くないだろう」という大雑把な判断が働いていたのでしょう。しかし、各社の競争が激しくなったことによって、一気に手数料の水準が低くなりました。

手数料の検討は、運用商品も含めたトータルで

 もう一つの手数料は、運用商品にかかる手数料です。投資信託商品は、資産残高に応じてかかる信託報酬(残高の年0.1296%~2.16%)があります。今年1月からの新プランの発表にあたっては、各社が競って低信託報酬のインデックスファンドを導入し、運用商品の低コスト化も一気に進みました。

 ただ、投資信託の信託報酬については、水準が低いに越したことはありませんが、アクティブファンドの場合は、ベンチマークである市場平均を年率で数%上回る運用成績を継続的に挙げている実績に見合った手数料という場合もあり、単純に「高いからダメ」というわけでもありません。そのような運用成績も十分に吟味して、運営管理機関が選び抜いた商品群が運用商品のラインアップになっています。

 このようにiDeCoの手数料を検討する上では、口座管理手数料に合わせて、運用商品の信託報酬も調べて、トータルで必要なコストを把握することが大事になります。


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期間限定での運営管理機関手数料の無料化は地銀にも広がる

 運営管理機関手数料については、冒頭にあげた4社だけでなく、さまざまな条件付けで無料にするところもあります。大和証券は残高が50万円以上で無料、第一生命保険は残高150万円で無料です。また、損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントは、毎月の掛金2万円以上、また、残高200万円以上で無料ですし、掛金が1万円以上の場合は残高が100万円以上で無料になります。毎月の掛金が1.2万円の場合、5年間で72万円、10年間で144万円になるため、長く続けることを前提にすれば、このように残高基準を設けている金融機関のiDeCoも、いずれ無料になります。

 あるいは、期間限定で運営管理機関手数料を無料にする金融機関もあります。りそな銀行、野村證券、日本生命保険、横浜銀行、池田泉州銀行です。大和証券、第一生命保険は、一定期間は無料にするキャンペーンを併用しています。キャンペーン後は、月額200円程度~330円程度の手数料が必要にはなりますが、加入当初に運用の核となる資金を効率的に積み立てる効果は小さくありません。りそな銀行は無料期間が長く、18年12月末までの加入で加入から2年間を無料としています。

iDeCoの最大のネックは「iDeCoだけでは足りない」こと

 iDeCoの手数料について考えると、「拠出限度額」という制度が抱える課題が強く意識されます。自営業者こそ、iDeCoで月額6.8万円(年81.6万円)の積立が可能ですが、会社員の場合は企業型年金がない人で月額2.3万円(年27.6万円)、企業型年金がある場合は月額1.2万円(年14.4万円)です。公務員の限度額も月1.2万円。口座管理に最低でも月額167円がかかりますが、月額掛金が1.2万円では1.39%に相当しますが、月額3万円の場合は0.56%です。口座管理手数料は一定金額なので、掛金が大きくなれば、それだけ手数料の負担感は小さくなります。iDeCoの価値を高めるためにも、「拠出限度額の拡大」は、今後に取り組んでいかなければならない課題といえます。

 また、現実問題として、毎月1万円の積立を行ったとして、40歳から初めて20年間で積み上がる資金量は240万円です。この程度の金額は、「ないよりはまし」と感じられる程度ではないでしょうか? もちろん、この拠出金額に対し年20%の税メリットが得られるのであれば、「やらないと損」とはいえますが・・・。「頑張ってiDeCoを始めよう」といえるような積極的な気持ちにはなりにくいと思います。

 「老後の安心」につながるような、まとまった資金を準備するためには、iDeCoだけでは不十分です。NISAや一般の口座も使って、コツコツと準備する必要があります。ご自身の家計(お金のやり繰り)を総合的に管理して効率化しようと考えた場合、給与口座があり、住宅ローンも借りている家計のメインバンクにiDeCoの口座を持った方が「何かと便利」ということもあるでしょう。iDeCoは60歳まで引き出すことができない制度であるだけに、iDeCoの加入にあたっては、iDeCoだけではなく、その他のサービス内容も確認した上で判断をしたいところです。