資産管理コラム

iDeCoの運用、元本確保型だけでは元本割れもあり株式運用が必要ってホント?

2017/05/12 15:39

 iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は、今年1月から公務員、専業主婦(夫)にも解禁され、老後の生活費を確保するための資産形成手段として大いに注目を集めています。そのメリットとして税制メリットが強調され、たとえば預貯金等の元本確保型商品のみで運用しても掛金の所得控除(掛金の年額に対し15%~55%)で恩恵があるといわれます。しかし、元本確保型商品だけでの運用では物価上昇等を考慮すれば実質的に元本割れの可能性があり、グローバル株式(日本を含む先進国株式)を運用に組み入れた方が元本割れのリスクを低減し、リターンも高まるということがデータで示されました。

 このデータが示されたのは、社会保障審議会の確定拠出年金の運用に係る専門委員会でのこと。委員の一人である臼杵政治氏(名古屋市立大学大学院経済学研究科教授)が、指定運用方法(デフォルト商品)の基準を議論する場に提出しました。デフォルト商品とは、本来なら運用商品を自己の責任で指定して運用するところ、「商品を選ぶ余裕がない」「自分では知識不足で運用商品を選べない」などの事情があって運用商品を指定しなかった場合に、掛金を振り向ける運用商品のことです。デフォルト商品は、本人が運用指図をしていなくても3カ月間などの一定の猶予期間を経て、本人が運用したとみなされるため、その決定にあたっては企業型であれば事業主らなどが、iDeCoでは運営管理機関が十分に検討することが求められています。

 臼杵氏が提示した資料では、以下のような事実が示されました。実際の資料には「名目値」もありましたが、現実の生活に即して考えるのなら物価上昇なども考慮した「実質値」の方が参考になると考えます。臼杵氏は、この資料について「確定拠出年金は、掛金を毎月積み立てていくため、等金額ドルコスト平均法の効果が期待できる。しかも、60歳までは運用を継続する長期の投資になる。価格変動の大きな株式投資と元本割れしない定期預金等を単純な印象で判断するのではなく、等金額ドルコスト平均法を使った結果という実態に合わせて理解する必要がある」と主張しています。

「グローバル株式」の累積積立額に目を見張る

 資料では1980年1月から四半期(3カ月)ごとに等金額を拠出して20年間積み立てた結果を見ています。毎月拠出するiDeCoの実態とはやや異なりますが、等金額ドルコスト平均法の効果を図る点では意味のある検証結果になっています。2017年3月末までの結果を調べたのが以下の表です。

 資料によると、「マネー(定期預金)」100%で運用した結果(右端の列)にあるように、208回のうち36回が実質的に元本割れ(下表の80未満)になっています。これと比較すると、「グローバル株式」を組み入れた左側の4列は、「グローバル株式」100%で2回だけ元本割れだったものの、その他(30%、50%、40%の配分)では元本割れがゼロでした。しかも、平均の累積積立額の平均値も、「マネー」100%は85.8のところ、グローバル株式を組み入れた場合は109.7~146.1と大きな運用成果も確認できます。


20170512.jpg

※ 第6回社会保障審議会企業年金部会 確定拠出年金の運用に関する専門委員会(臼杵委員提出資料)
  モーニングスターで資料に赤囲いなどの加筆して作成


iDeCoに特徴的な長期の積立投資の効果を意識して投資商品を選定したい

 いかがでしょうか? 上記の資料は、もちろん1980年1月~2017年3月末の期間を振り返って検証した結果に過ぎません。今後も同じようになるとはいえません。資料では「日本株式」100%の場合は、208回中113回が元本割れであり、20年間累積の平均値でも元本割れという悲惨な結果になっていますが、これが日本株式の投資成果と決めつけることはできないのです。「グローバル株式」を組み入れることで、必ず元本割れを回避できると決めつけることもできません。

 掛金の全額所得控除のメリットは、iDeCoの加入者に等しく与えられます。「預貯金」100%でも「日本株式」100%でも、所得控除の結果は同じです。選択する運用商品によって異なってくるのは、累積積立額の結果です。「日本株式」100%の場合、平均は78.7と元本割れでしたが、最高は127.8になります。「グローバル株式」100%の場合は、最高で227.8まで大きくなることもありました。

 一般に株式への投資は、元本が確保されていないことを理由に「怖い」などと投資を避ける人が少なくありませんが、iDeCoにおいては毎月、少しずつ積み立てていくことで等金額ドルコスト平均法の効果が得られること、また、「グローバル株式」のように広く分散されている場合は長期に投資することによって価格変動による下落リスクも抑えられることなどを踏まえて、運用商品の選択を考えたいところです。