資産管理コラム

iDeCoで運用商品数が多過ぎると運用できない? 運営管理機関(iDeCoを提供する金融機関)の選び方

2017/05/02 20:11

 iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の運用商品数は、多過ぎると運用ができなくなってしまうのでしょうか? iDeCoの運用商品ラインアップは様々です。法律で定める最低本数の3本もあれば、65本の商品を提供しているところもあります。現在、社会保障審議会でラインアップの上限を定める議論が続いていますが、4月18日に開催された「第5回 確定拠出年金の運用に関する専門員会」で厚生労働省が調べたデータが、議論の行方に大きな影響を与えています。そのデータでは、「運用商品数が35本を超えると不指図者の数が明らかに増える」ということが示されているのです。多くの人は、選択肢が35を超えると選ぶことをあきらめてしまうのでしょうか?

運用商品数が35本を超えると、人は選ぶのをあきらめる?

 厚労省が示したデータは、記録関連運営管理機関(レコードキーパー)3社(SBIベネフィット・システムズ、損保ジャパン日本興亜DC証券、日本インベスター・ソリューション・アンド・テクノロジー)の2017年1月時点での企業年金加入者の全データを分析しています。加入者自身が運用の指図を行わず、デフォルト商品が適用され、その後、1度も運用の指図を行わずにデフォルト商品が適用されたままのことを「不指図」と規定し、企業年金の提供している運用商品数と不指図者の関係を調べたものです。(検証結果は下図のとおり)


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出所:第5回 社会保障審議会 企業年金部会 確定拠出年金の運用に関する専門委員会の資料

 このデータによると、企業型の確定拠出年金で、運用商品提供数は11本~20本というプランが多いことがわかります。そして、運用商品数が35本を超えるプランでは、加入者全体に占める不指図者の割合(不指図率)が全体平均15%を大きく上回る結果になりました。特に、41本を超えると、41~45本で60%、46~55本で43%、56本以上で43%と著しく不指図率が上昇しています。この結果をそのまま評価すれば、35以上の選択肢があると、選択肢が多過ぎて「選ぼうとする意欲」がそがれるということにつながりそうです。

 もっとも、このデータは企業型確定拠出年金の実態である点は留意して考える必要があります。つまり、加入者は否応なく加入させられていること。そもそも「確定拠出年金」という制度がなければ、資産運用(運用指図)など、一生しなかったかもしれない人も、会社が用意した制度なので加入しています。中には、親が資産運用で大きな失敗をしたなどの事情があって、「資産運用」を嫌悪している人もいるでしょう。

 企業型では、資産運用の経験がない人も加入することは制度の前提になっているため、企業には「投資教育」が義務として課せられていますが、罰則のある義務ではないので、企業によっては熱心に教育しているところもあれば、加入時に一通りの説明をするものの、その後の研修会や勉強会などを開いていないところもあります。熱心に勉強会などを開いている企業の従業員は、資産運用についての理解が進み、運用指図することへの抵抗感が薄らいでくることもあるでしょう。また、企業が制度だけを導入し、投資教育をほったらかしにしていると、従業員も運用をほったらかしにしてしまう(不指図のまま)ということもあります。

 加えて、企業型の掛金を拠出するのは「企業」です。「前払い退職金」と「確定拠出年金」が選択制で、自分の給与の一部を確定拠出年金で積み立てていることを自覚している人もいるでしょうが、多くの人は会社が育児休暇などの福利厚生制度と並んで年金のこともやってくれているというとらえ方でしょう。実は、確定拠出年金では「運用」については、加入者自身に責任のある制度なのですが、その自覚がある人は少ないのが実態です。たから、不指図率は、自ら掛金を拠出する個人型(iDeCo)と比較して高くなる部分はあるでしょう。

運用商品数にしたがって増える説明資料はA4で数百ページに

 それでも、不指図率の水準そのものが35本を境に、大きく上昇していることは意味があると考えられます。たとえば、投資信託1本の商品内容を知るために用意されている資料を考えてみます。まず、運用方針などを説明する「交付目論見書(こうふもくろみしょ)」がA4で8ページくらいの分量です。次に、「運用報告書(マンスリーレポートなど)」など、最近の運用状況について説明する資料が、A4で3ページくらい。これだけを読んで商品内容が理解できると仮定してもA4で12ページの資料があります。20本の品揃えがあると、A4で240ページの資料の量になります。ちょっとした小説を1冊読み切るくらいの分量です。

 実は、1つのファンドについて運用会社が用意する資料は、より分量の多い「請求目論見書(せいきゅうもくろみしょ)」や「交付運用報告書」などがあります。これらに全て目を通そうとすると、1本の投資信託について200ページくらいの資料になることもあります。

 もっとも、少し投資信託について知識がある人は、「TOPIX(東証株価指数)に連動するインデックスファンド」という記述があるだけで、すべての資料に目を通さなくても、そのファンドは理解できるでしょう。運用商品について「理解する」ことは、人それぞれです。ただ、さすがに目の前に数百ページの資料が差し出され、それを読んで理解しなさいといわれれば、多くの人にとって荷が重く感じられるでしょう。先ほどの例に戻れば、運用商品30本では360ページ、50本では600ページですから。さすがに、40本、50本という品揃えがあると、その資料を読んで理解しようと考える人が激減するということはうなずけます。

 社会保障審議会の議論を追っていると、「国内外の株式、債券など様々な資産に分散投資することを考えるのであれば、インデックスファンド6本(または8本)に加え、バランスファンドが数本という品揃えで十分ではないか。インデックスファンドに対応するアクティブファンドを加えたとしてもせいぜい20本程度で足りる」という方向に落ち着きそうです。運用商品数の上限は、少し余裕を持たせて30本程度が落としどころでしょうか。

 もちろんインデックスファンドといっても、たとえば、「日本株式」を対象として「TOPIX」と「日経225」、「JPX日経400」など、数えだしたらいくつものインデックスがあります。海外資産への投資では、「先進国」と「新興国」、為替のヘッジを「有」「無」など、いろんな選択肢を設けることができます。「REIT(リート=不動産投信)」や「コモディティ(金などの現物資産)」を加えるかどうかでも本数が変わります。バランス型ファンドも様々な種類があるため、複数本といっても2~3本揃えるのか、7~8本でも足りないのか、考え方は様々です。

iDeCoの品揃えで肝心なのは資産の分散

 iDeCoの品揃えが大きく異なるのは、様々な考え方のある個人の運用ニーズに応えたいと、プランを提供する運営管理機関が、それぞれ真剣に考えた結果なのでしょう。iDeCoは企業型確定拠出年金とは違って、自分で掛金を出すことが明確ですし、押し付けられて加入するのではなく自ら始める決断をしたという自覚があります。品揃えの数だけを取り上げて、良し悪しを判断するのは乱暴です。

 ただ、肝心なことは、「十分に分散したポートフォリオで運用することが可能なのか?」という視点を持つことだと思います。当サイトでは、投資信託の品揃えに10のカテゴリーを設けました。「先進国」と「新興国」を分け、「バランス」と「ターゲットイヤー」を分けました。そして、「REIT(リート)」と「金コモディティ」もチェックしています。この10のカテゴリーに少なくとも1本ずつの商品があれば、十分に分散したポートフォリオが作れるだろうという目安になると考えています。

 もっとも、「iDeCoで運用の全てを実現する必要はない」という考え方もできます。iDeCoは老後の生活で使う年金のために長期で積み立てる資産ですから、基本的な分散投資ポートフォリオで運用できればよいと割り切り、十分に分散投資されたポートフォリオは証券会社に口座を開いて取り組めばよいという考え方です。

 iDeCoは、自分で年金を作るために利用する制度としては大きなメリットがありますが、資産を作る手段はiDeCoだけではありません。運営管理機関(iDeCoを提供する金融機関)を選ぶときには、自分の資産形成の手段として、iDeCoに期待する役割についても考えて判断しましょう。