大変革期を迎えた「iDeCo」各社新プランの特徴を読み解く
2017年1月よりiDeCo(個人型確定拠出年金)が公務員や専業主婦も対象となり、実質20歳から60歳までの日本国民が全員加入できるようになる。iDeCoって何?と思う方も多いと思うが、ここで簡単に説明しよう。iDeCoとは、「individual-type Defined Contribution pension plan」の頭文字の略で、直訳すると個人型確定拠出年金なのだが、1月の確定拠出年金法改正に合わせて認知度を高めるため、親しみやすさを重視して命名された。
iDeCoは将来受け取る年金を自らが責任を持って運用する制度だ。毎月一定金額の積み立て運用を行い(積立可能金額一覧はこちら)、60歳以降に年金または一時金で受け取ることができる。iDeCoの最大のメリットは3つの節税とも言われる。まず、月々の積立金額が全額「所得控除」となる。そして運用益は通常20%課税されるが「非課税」となる。更に受け取り時は一時金で受け取る場合は「退職所得控除」に、年金で受け取る場合は「公的年金等控除」が受けられる。
毎年120万円までの非課税枠で資産運用ができるNISA(少額投資非課税制度)や、その他の課税口座との違いは下記の通りだ。(図表1参照)NISAは一度商品を売却してしまったら、その枠は消滅してしまうが、iDeCoは自由に配分変更ができる。運用期間はNISAでは5年間であるが、iDeCoは60歳まで積立てができる。一方、NISA は自由に解約や引き出しができるが、iDeCoは60歳までは積み立てた金額は原則引き出すことはできない点に注意が必要だ。
図表1:iDeCo・NISA・課税口座の違いはこれだ!
iDeCo | NISA | 課税口座 | |
---|---|---|---|
運用可能商品 | 投信、元本確保商品 | 株、投信 | なんでも |
商品の入れ替え | 可能 | 出来ない (一度枠を使ったらその枠は消滅する) |
可能 |
運用期間 | 20歳から~60歳まで | 5年 | いつでも |
投資上限額 | 会社員、公務員、専業主婦等で それぞれ上限金額が異なる |
120万円(年) (最高600万円) |
なし |
解約&受取 | 60歳以降受取 (一部例外あり) |
いつでも | いつでも |
口座管理諸 手数料 |
かかる | かからない | かからない |
運用商品 | 運営管理機関が扱っている商品のみ | NISA口座を開設している 金融機関の商品のみ |
なんでも可能 |
課税 | ・掛け金に非課税枠あり ・何度売り買いしても 運用益非課税 ・退職所得控除あり |
通用益非課税 (損益通算不可) |
通常課税 (損益通算あり) |
※ モーニングスター作成
金融機関の商品戦略は各社各様
2016年中旬以降、確定拠出年金法改正を前にして、iDeCo取扱金融機関は、各社のiDeCoに対して運用商品拡充などの改定を行ってきた。また、楽天証券や損保ジャパン日本興亜アセットマネジメント等は、新規にiDeCoの取扱いに参入した。2015年末と2016年末で取扱商品数を比較すると、(図表2参照)メガバンクでは商品数を削減する傾向にある一方、証券会社や生命保険、損害保険会社では取扱商品を拡充する傾向にある。私見では、メガバンクは投資未経験者を主なターゲットとし、どの商品を選んでいいのか分からない人でも選択しやすいよう、商品を絞り込んでいる一方、証券会社などは顧客が少しでも商品の選択肢が広がるよう、商品数を増やしているのが伺える。年金制度を決定している社会保障審議会では、以前より運用商品数の上限を設定する議論が続いているが、iDeCoは強制ではなく、自ら進んで加入するものなので、削減は適切ではないとの考えもあり、商品上限設定の実現可能性は現状では定かではない。地方銀行では、大手金融機関と提携してiDeCoを提供するケースが多いが、その中でも商品ラインナップで独自色を出す動きが出てきた。なお、図表「その他」の商品数の減少は、さわかみ投信が商品数3本のiDeCoを出したことが要因で、投資信託はさわかみファンドと国内債券のみという、何ともユニークな制度である。
図表2:金融機関取扱商品数の変化
※モーニングスター調べ
iDeCo(個人型確定拠出年金)のプランを設定している主な金融機関(情報非公開先は除く)の平均取扱商品数
商品数の内訳を詳しく見てみると、みずほ銀行では27本から11本に、投資信託はバランスファンド以外すべてパッシブファンドとした。三菱東京UFJ銀行も22本(旧Aプラン)から商品数を10本まで減らしたプラン(ライトコース)を設立し、投資信託はすべてパッシブファンドとした。一方、SBI証券は28本から62本に、岡三証券は32本から40本に商品数を増やしている。
では結局どこの金融機関を選べばいいのかが問題だ。個人の投資方針、運用方針に合った金融機関を選択することが重要となってくる。商品数を絞り込んだが故に、商品の選択肢が限られ、新興国ファンド等がラインナップから削除されているケースもある。(図表3参照)iDeCoの金融機関選びでは、取扱商品数やどのようなカテゴリーの商品があるかも注目すべき事項だ。