資産管理コラム

あなたの勤める会社には退職金がありますか? iDeCo加入のデメリットを考える

2017/03/15 14:53

 今年1月から鳴り物入りで始まったiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は、「個人向けの最強貯蓄手段」ともいわれますが、だからといって、すべての人に等しくメリットがあるとは限りません。「将来の年金不安を緩和するため、毎月5000円でもいいからiDeCoをやっておこう」とは、多くの人にいえることですが、中には、「同じ貯蓄をするならiDeCoより、NISA(ニーサ、少額投資非課税制度)でしょ」という人もいます。iDeCoのデメリットについて考えてみましょう。

iDeCoの口座管理手数料は専業主婦(夫)には負担

 まず、iDeCoが最強の貯蓄手段といわれる理由は、「拠出時の所得控除」「運用時の非課税」「受取時の退職・年金控除」という節税3大メリットがある唯一の制度だからです。所得税率10%の人がiDeCoで毎月1万円を積み立てると、税控除だけで所得税と住民税を合わせて年間2.4万円程度の節税になります。iDeCoでは、元本確保型商品での積立も可能なので、年間12万円に対し無リスクで20%の利息と同等の見返りが得られる計算です。マイナス金利時代に、これほど有利な貯蓄手段は他にありません。

 ただ、iDeCoのデメリットのひとつとして「口座管理手数料」の徴収があります。「手数料無料」をうたっている金融機関のプランでも、最低必要な手数料として国民年金基金連合会が徴収する月額103円(税込)と、信託銀行が徴収する64円(同)がかかります。したがって、年間2,004円は収益からマイナスになる計算です。先ほどの年間2.4万円の節税額の範囲内ともいえますが、20%と思っていた利回りは18.3%に低下します。

 この口座管理手数料は必須なので、掛金に対する所得控除がない専業主婦(夫)の加入では気を付けなければなりません。毎月1万円の掛金に対し、最低水準の口座管理手数料(2,004円)でも年1.67%に相当します。ゼロ金利の定期預金で積み立てた場合、積立金額に対して1.67%のマイナス利回りになるのです。年利回り1.67%に満たない商品での運用は損を重ねるだけです。限度額いっぱいの月額23,000円を積み立てた場合の手数料率は0.73%と負担感は小さくなりますが、元本確保型で運用するのであれば、iDeCoを使わずに、ただ銀行に積み立てた方がましといえるでしょう(NISAは元本確保型商品が使えません)。

 何のための貯蓄なのかを考えて、利用する口座を分けて考えるようにしましょう。


目的に応じて、お金の置き場所を考えましょう!


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出所:モーニングスター作成


大企業に勤めていて、定年まで勤務するのならiDecoは不要!?

 さて、所得控除メリットのある会社員・公務員であれば、十分なメリットが得られるといえるのでしょうか? 確かに、所得控除の節税メリットはあり、運用益非課税、受取時の税額控除などの3大メリットを十分に享受できますが、「本当にiDeCoが必要なの?」ということを改めて考えてみてください。

 なぜなら、iDeCoは60歳になるまで引き出せない資金だからです。

 あなたの勤め先には退職金がありますか? 定年退職時に受け取れる退職金の水準をご存知ですか?

 さて、公務員の退職金については、総務省が実態調査を調べて公表しています。それによると、平成28年調査で政令指定都市(20団体)の退職手当の平均支給額は横浜市で1,518万円になっています。福岡市は2,128万円です。退職金が2,000万円あれば、あわてて老後準備に頭をひねる必要は小さいのではないでしょうか? もちろん、退職金で住宅ローンを完済するとか、退職金の使い道がすでに決まっているのであれば話は別です。

 iDeCoは老後にしか使いようのないお金なのです。もし、退職金で住宅ローンを完済するつもりであるのならば、退職金は老後の生活にとっておいて、その他の貯蓄で住宅ローンの前倒し返済を考える方が賢明です。住宅ローン前倒し返済のための資金づくりであれば、iDeCoではなくNISA、または、一般の口座になります。

 民間企業の退職手当については、中央労働委員会が調べている「賃金事情等総合調査」が参考になります。資本金5億円以上、労働者1,000人以上の企業を対象とした調査ですが、平成27年調査で大卒(総合職)の定年退職(満期勤続)が2,303万円、高卒は2,015万円となっています。

 このように、2,000万円以上の退職金を勤め先が用意してくれるのであれば、60歳まで引き出すことのできないiDeCoで資金を積み立てるメリットは小さいのではないでしょうか? むしろ、ライフイベントを考えると、住宅取得、子供の教育費(特に大学の入学金)など、60歳を迎える以前にまとまった資金が必要なイベントがあります。そのための資金は、iDecoでは用意できません。

 もっとも、退職金制度の満額取得は定年までの勤続が条件になります。転職をすれば、受け取れる退職金の金額は大きく減額されます。これからの働き方も含めて、落ち着いて将来を考えてみることも必要です。そして、30代以降に転職をするのであれば、退職後の資金についてiDeCoを使って自分で用意する覚悟もしましょう。毎月一定額を貯蓄に回すという習慣を早くからつけておくと、転職の有無とは関係なく、ゆとりを持った人生プランを考えられると思います。

転職した場合は、途端に少なくなる退職金

 あなたは、今の勤め先に定年まで勤めますか? 転職した場合は、途端に退職金の金額が小さくなってしまいます。中央労働委員会の「賃金事情等総合調査」では、自己都合の退職の場合の平均退職金額は448万円になります。したがって、30代や40代で転職をした人は、自己努力で老後の準備を進めておきたいところです。

 もちろん、退職金制度がない会社、あるいは、退職給付の金額が小さい会社に勤めている場合は、自分の努力で老後の資金を積み立てていく必要があるでしょう。厚労省の調査(平成25年就労条件総合調査)では、退職給付(一時金・年金)制度がない企業が約25%。退職給付制度がある企業でも、従業員100名未満の企業で退職一時金のみの場合は、35年以上勤務しても退職金の平均は919万円にとどまるという結果でした。老後を迎えた時に、貯蓄もなく、1,000万円に満たない退職金しか手元にないというのは、やはり、不安になるでしょう。

 現在の平均的な老後世帯(高齢夫婦無職)の収支でも、毎月5.5万円が不足しているという調査結果です。毎月5.5万円を取り崩す生活では、1000万円の現金は15年でゼロになります。80歳を超えて、健康状態にも不安を感じる時に、毎月の生活費を一段と切り詰めて考えるのは辛いことです。何らかの貯蓄をしておくことが大切です。

 貯蓄をしたいという人に、FP(ファイナンシャルプランナー)が良くするアドバイスに、「毎月の生活費で余ったら貯蓄するでは、お金は貯まらない」ということがあります。貯蓄をしたい場合は、給与から最初に取り分けて、残ったお金で生活するように習慣づけることがポイントです。また、当然、貯めたお金は目標の金額が貯まるまで、引き出さないことが重要です。iDeCoは「60歳になるまで引き出せない」という制限があります。老後のために積み立てるという目的のために資産形成をするのであれば、この制限が、むしろメリットに変わるといえます。

 転職を経験したり、勤め先に十分な退職金制度がない場合は、むしろ、iDeCoを使った資産形成をこそ、第一に検討してはいかがでしょう。iDeCoには、拠出金額に限度額があり、その水準は決して高くないため、できるだけ早くはじめ、長い時間をかけて積み立てていくことが重要になります。